閑話 転生魔族の部下の恋い事情
閑話ですので続きではありません。
リリー視点でのストーリーです
リリーは好きな人がいます。
怠け屋さんでわがままですぐにかっこつけたがる、そんな人。
でも彼は強くて、どんなピンチでもこの人ならと思わせるそんな魅力があります。
そんな彼――私の上司である隊長との話です。
◆◆◆◆◆
とある引きこもりの一日 その3 にて
「フハハッハ! 我は無敵なーり」
「フハハッハ! 淫魔なーり」
隊長はいきなり変なポーズをとって叫びだし、リリーもそのポーズをとり叫ぶ。
この行動をするからして隊長は暇なのだと読み取れた。
その相変わらずぶりに呆れを感じつつも何処か嬉しい気持ちがある。
まあ、そんな事はいい。
今日こそリリーは隊長にリリーのことを知ってもらうんだ!
心臓がバクバクしながらも表情を変えず隊長に話しかける。
「あ、因みに私淫魔ですけど未経験なんですよ」
「……いや、聞いてねえよ」
うっ、押しが甘かったですか!
こうなったら……
「は、初めてはそ、その大切な人に捧げたいなあと思って」
「だから聞いてねえよ」
うぅ~、なんで気づいてくれないんですか!
リリーは悲しくて目に涙が溢れそうに、それを隊長はきっと「キラキラした目で見てんじゃねえよ!」みたいな感じで思っていることでしょう。
酷いですよ隊長!
「あー、なんだ、そのお、良い人が見つかるといいな」
隊長が後ろ頭を掻きながらそう言ってくる。
これはしめた!
リリーはこれを逃しません!
本人を目の前に言うのは恥ずかしいですが頑張りますよ。
「え? もう居ますけど?」
それを聞いた隊長は若干落ち込んだ素振りを見せた。
おや? これはまさか、脈ありです?
と、思った直後に隊長は何やら考え事をし始める。
どうやらリリーの勘違いだったみたいです。
隊長の次はリリーが肩を落としました。
そんなリリーに隊長が、
「なあ、リリーが好きな人ってどんな人なんだ?」
おや? これはこれは!
まさかのアピールチャンス!
ここで遠まわしにでも隊長のことだと分かってもらえればと特徴を言う。
「そうですねー、怠け屋さんで直ぐにわがままを言ったりかっこつけたりする人ですかね」
「ええー、それのどこがいいの? 全然ダメじゃなかー」
自分のことなのによく馬鹿にできますね……
「ふふふ、でも強いんですよ? それにやるときはやるんです」
その一言に隊長はまたもや思考し始める。
一体隊長は何を考えているのだろうか。もの凄く、悩んだ顔をしている。
これは「○○したいけど部屋でたくないなあ」という時の顔に似ている。
ひとしき考えた隊長は結論に至ったみたいで、無言でうんうんと頷いていた。
これは話が終わるパターンだと思いすかさずリリーは言葉を付け加える。
「本当に強いんですよ。えへへ」
最後の悪足掻きだったのは否めない。
しかしこの作戦に隊長は乗ってくれた。
隊長はさっきと同じ位悩んだ顔で、しかも何故か悔しそうな顔でもある。
そして隊長は腰を直角に曲げてこう叫んだ。
「リリーお前の好きな人の名前教えてくれ!」
「ええ! 嫌ですよ!」
咄嗟に返答をしてしまった。
だって当たり前ですよね? 本人が好きないとは誰と聞いてきて「あなたのことが好きなんです!」なんてリリーには到底無理です!
そんな事を言ったらリリーは顔が噴火しますよ!?
もう隊長の前には立てません!
「たのむ! そこを何とか!」
しかし隊長も頑固で、ここは食い下がってくる。
隊長は膝をついて両手とおデコを地面に着けた。
「頼むぅうううう!」
こ、これは隊長がいつも言っていた「ド・ゲ・ザ」というやつですか!?
説明しよう。
ド・ゲ・ザとはなんでも、どんな誤ちでも許してもらえどんな無理難題でも答えてしまう究極の儀式魔法――なのだそうです。(隊長説)
これで俺はのし上がってきたとも言っていました。
その効果はてきめんして、私は折れました。
「うぅ、誰にも言いません?」
「ああ、誰にも言わない! 約束だ!」
「絶対ですよ?」
「ああ、絶対だ!」
深呼吸をする。心臓はバクバクと鼓動し、顔は熱くなる。
いくら深呼吸しても足らないけれど、私は決意を決め口を開く。
「私の好きな人は、よ――「また来たぞ、魔族! 今度こそ――「うるせーよ! ゴラァ!!」」」
突然勇者の乱入。
隊長はいつも手加減しているのに今日に限ってはいつもより強めに顔面パンチを食らわせていました。
勇者は鼻を潰され後方へぶっ飛ぶ、壁を一枚、二枚、三枚、四枚と壊れていき。
ああ、これいくら修理代がかかるのだろう。
と、無意識的に計算をしていました。
流石に隊長も今日は勇者を治療しないのかと思いましたが、勇者の余りにも残念な顔になってしまったので遠距離ながら回復魔法を放っていました。
隊長の回復魔法は異常で、直接かけてもあそこまで回復しないのに遠距離でもこの回復効果は驚きと尊敬しかなかった。
治療が終えた隊長はパアッと顔を明るくしながら
「よし、これで心置きなく聞ける。さあ! リリー教えてくれ!」
「すみません! やっぱり恥ずかしくて言えません! それじゃあ、勇者パーティーを村に運んできます!」
そう言うとリリーはそそくさとロープで勇者達を纏めて逃げるように外に出ていきました。
「はぁ、リリーはサキュバスとして失格です。いつになったらこの想いを伝えることができるのでしょうか……はぁ」
村近くに勇者たちを置いてきたリリーは一人で今回の反省会をしました。




