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とある引きこもりの一日

連載版です

「また来たぞ! さあ覚悟しろ悪魔!」


 俺の目の前でそう叫んでいるのは勇者だった。

 勇者パーティーの中は五人で形成され、勇者、僧侶、騎士、魔法使い、弓使いとおおよそテンプレと呼ばれる組み合わせで成り立っていた。


「フハッハッハ! よくぞきた勇者よ。こうして自己紹介するのは何度目になるか。まあいい、我は魔王様の幹部バラキェール様の率いるバキューム騎士団第四番隊隊長ヨゾラである! また性懲りも無く現れたものだ!」


 頭には禍々しい角、背中にも同じように禍々しい翼が付いている。

 そのほかは全く人と同じなのだが、この角と翼のおかげでひと目で悪魔だとわかる。

 俺ヨゾラは元は吉武 夜空という名前で人間をやっていた。

 この名前でお察し通り日本人だったのだ。

 そんな俺がなぜこんな所で悪魔になっているのかというと。

 まあトラックで撥ねられそのままチートを所持して異世界転生してしまったのだが、一つ問題があった。


 魔族、しかも魔王の部下と言う微妙な立ち位置で転生してしまったのだ。


 俺ね、そのときマジで絶望したよ。

 ねえ、なに? 俺勇者じゃないの? って本当に悩んで悩み疲れてもう夜もぐっすり眠れたよ。


 とまあ、そこから立ち直るのには長かったね。

 確か一日もかかったよ。

 え? 短いじゃんって? そんなことはどうだっていいんだよ。

 まあ聞いてくれ、それからだ。

 俺はチートを持っていた。と言ってもそんな特別な魔法を持ったりしている訳ではなくて筋力チートや馬鹿でかい魔力、尋常じゃない回復能力と魔法と格闘技術そんな感じのチートを授かっていた。

 これあれだ、もう俺魔王なんじゃね? って思ったね、実際に魔王より強かったし。


 それからはまあ色々と考えた結果、目立たない程度に活躍して、幹部のお墨付きをもらってそれがバラキェールの部隊に配属され隊長にまで上り詰めたんだが。

 もういいやってなって、そこからはこの中盤フロアを請け負って引き隠っているって訳だ。



 それから度々勇者パーティーがこの俺の部屋に訪れるんだが、正直何度目なのか分からない。


「今日こそ次の部屋に通らせてもらう!」

「フッ、それはこの我を倒すという事か? フッハッハッハ、失笑失笑。この魔王様の幹部バラキェール様の率いるバキューム騎士団第四番隊隊長ヨゾラに勝てるとでも?」


 俺はそれを言い終えると決めポーズを取る。

 勇者パーティー一行が少し固まっていたが、フッ知ったことではない!

 これが俗に言う中二病なのだから!


「お、おう。なら勝負だ!」

「来い! 勇者たちよ!」


 闇の最上級魔法ナイトメアーを発動させる。

 勇者パーティーは一瞬に意識を失い、その場で倒れる。


「だから、この魔法の対策を練りなさいよね」


 瞬殺、いつもの事だ。

 毎度のことながらこの魔法が良く効く。

 この睡眠魔法でイチコロだ。


「あーあ、ちょっとー、リリー、コイツらよろしくね」

「はいはーい。全くこの方たちも懲りませんねえ」


 リリーと呼んだ少女は俺の部下でサキュバスだ。

 俺と同じように人型で、小さな角に小さな羽。俺より人間っぽい。


「えっと、いつもの村に置いてくればいいんですか?」

「そうそう、じゃあよろしく頼んだよ」


 リリーは勇者パーティーをロープで纏めるとそれをもって魔王城から出ていった。


 引きこもり生活をしてもう何年になるかわからない。

 毎日食っちゃねくっちゃねの繰り返しだ。

 偶に、というよりここ最近は毎日のように勇者パーティーがこの部屋に来るが、それももう最近の生活リズムの一部と化している。


「暇だ」


 最近の生活を一言で表すならばそれが適切だ。

 日本で高校生として生きていた時は別に引きこもりだったわけではない。

 まあ、アニメやラノベは好きだったがそれでもスポーツや外で遊ぶ楽しさも知っていた。

 つまり何が言いたいのかというと


「外に出たい」


 しかし、この魔王城の法律? として、魔王城をでる理由は人間を襲うという理由でしか外出を許されていない。

 全く理不尽だと思わないか?

 元の人間だった俺にとっては人間を襲うことなんえまず論外なわけで、結局外出ができないのだ。


「たいちょー、そろそろ各隊長ごとのミーティングですよー」


 勇者パーティーを村に置いてきたリリーが時計を見ながら、床でごろ寝している俺にそう言ってくる。


「んー、ああ面倒だからパスで」

「ええー、またですか!? んもー、報告するこっちの身にもなってくださいよね」

「ああ、お前にはいつも迷惑をかけっぱなしだ。ひょっとしたらもうお前なしでは生きていけないかもしれない」


 こんな仕える部下は、中学三年生の時の従順な後輩以来だ。本当に優秀な子だ。


「わ、私無しでは生きていけないですか。そ、そうですか。えへへ」


 リリーは顔を赤くしながら、両手の人差し指どうしをチョンチョンとつつく。

 そんなに嬉しいものなのか? まあ、確かに上司から褒められるのは嬉しいかもしれないけどそこまで嬉しがると、なんだか頭を撫でてやりたくなる。


「ふぇえ! い、いきなりなんなんですか!?」

「あ、すまん。何か急に撫でてやりたくなってな。嫌だったよな」

「あ! いえ、その、どうぞ! もっと撫でてください!」

「お、おう」


 嫌がると思ったが撫でる許可までもらってしまった。

 俺は頭以外にも、羽などを撫でる。


「ひゃいっ!」


 リリーは跳ねるよな声を上げる。

 自分でやっていてなんでが、何か……エロい。

 エロいのは元々か、サキュバスなんだしそれにスタイルも良い。

 なんてったってこの胸がなんとも、服装も胸が強調されていて。あれだ、もう誘っているようにしか考える余地がない程にエロい服装をしているのだ。


「でも見た目がねえ」

「はい?」

「え、ああ、いやこっちの話だよ?」


 見た目が扱い通り後輩にしか見えないのだ。

 妹と言うのも当てはまるかもしれない。

 兎に角俺はコイツとは一線を超えようと思ったことはない。

 絶対にだ!

 ……ホントだぞ? ほ、ホントだからな!


 サキュバスお得意の淫夢魔法を使われたらそりゃあイチコロだけどね。テヘペロ!

 でも、今だにリリーがそれを使っていないということは今までの関係を望んでいるということだ。

 だから俺は上司リリーは部下、そして偶に頭を撫でて撫でられる関係として維持していくつもりである。

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