盛田出人の場合 その1 04
第七節
「で?盛田さんの今回の事件の推理を聞こうか」
「うん。その科警研職員はある日を境に忽然と姿を消した」
「ふん」
「直後に、彼に極めて近しかった捜査一課の刑事が結婚した」
「…?」
「若い美人の婦警だったらしい」
「いい話だ」
「しかしこいつは硬派で愛想もいい方じゃないから婦警からの評判は必ずしも良くなかった」
「…まあ、そういうこともあるだろ」
「ところが突如中途採用された美人婦警と結婚した」
「だから何なんだよ」
「この美人婦警は警察官スキルとしては問題無かったらしいが、警察学校の同期も誰も見たことが無かったらしい。経歴も謎だし天涯孤独。一人の近親者もいない」
「管轄が違ってただけだろ。警察学校なんて一校じゃないぞ。天涯孤独の警察官なんぞ吐いて捨てるほどいる」
「つまり、俺の推理はこうだ」
「…???今の情報で何が推理出来るんだよ」
「この科警研の職員は「カンパニー」について知り過ぎた。だからこそカンパニーの一員である刑事に目を付けられた」
「はあ」
「…そういうことだ」
「全く分からん。だから殺された…消されたってこと?さっきの婦警の話とどう関係があるんだよ」
「まだ分からんか」
「分かる訳が無い」
「…つまりこういうことだ。カンパニーの一員である刑事は科警研職員を女へと性転換し、婦人警官の制服を着せて婦人警官とし、その後秘密を守るために結婚したのだ!」
「…」
長い沈黙。
長い沈黙。
長い沈黙。
「その婦警は赴任すると同時に寿退社したそうだ。これこそ経歴のロンダリング。証拠隠滅の状況証拠に他ならない!」
「…」
「やはり無理があるかな」
「今のって推理じゃなくて、今度投稿するファンタジー小説のプロットとかだよな?」
「いや、駄目な可能性を排除していって残ったものはどれほど不自然でもそれが真実だってどっかの誰かも言ってたぞ」
「アホらしすぎて言葉も無い」
「検証が必要だな」
「いらねえよ!」
「そうか?」
第八節
「科警研職員の失踪は偶然!本人の意思かもしれんが、単なる事故!行旅死亡人かなんか探せば見つかるに決まってる!婦警にいたっては話にならん!天涯孤独な警官くらいおるわい!たまたまだたまたま!」
「…しかし偶然というには余りにも…」
「人の恋愛を超常現象みたいに語りやがって!失礼だろうが」
「だって、モテない男がいきなり若い美人と結婚するなんぞ陰謀でしかありえんだろうが」
「アホか!あるんだよそういうことは幾らでも!」
「…(いじけている)」
「この部署に誰も回されんで非公開になってる理由が分かるわい。何だって?その刑事が同僚を男から女にして結婚しただと?そいつは何だ。マンガかアニメの特殊能力持ちか何かか!?」
「…そうとしか考えられんだろうが」
「そんな訳があるかーっ!」
ぜえはあと息が切れている巣狩。
「…今ある行方不明案件はあと何件あるんだ?」
「数えてないが二十件以上はある」
「全部論破してやる」
「あと、カンパニー案件が疑われる事件については我々が現場入りすることも認めてくれるらしい」
「…どんな顔して現場行けってんだよ。正式に警視庁だって顔していくだけで地元警察に煙たがられるってのに」
「まあ…そこは何とか」
巣狩は大きくため息をついた。




