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長四木並絋の場合 16


第三十二節


「…じゃあ、あんたも元に戻れるってこと?」

「自分もやで。ハイヒールとか苦手やろ?無理したら外反母趾がいはんぼしになんで。はよもどりーや」

 完全に関西弁の女子高生である。大阪の街頭インタビューみたいだ。

「でも…どうすれば」

「ホンマに初めてなんやな。『戻りたい!』ってなイメージすれば一発や」

 口調は先ほどまでの長身のイケメンなのだが、声質がどうにも軽いので実に複雑な気分である。

 ぼん!と煙が上がった訳ではないが、瑛子はすっかり元に戻っていた。

「せやせや。要領は分かったかいの?」

「…」

 用心深く自分の身体を確認している瑛子。

「これがメタモル・ファイトや。おもろいやろ?」

 陸奥は(わざ)となのか、今度は両手を後ろに回して上半身をかがめ、上目使いできゅっと「しな」を作ってみせる。可愛い。

「気持ちわりいんだよ。お前も終わったんならさっさと戻れや」

 怖い顔である。

「ワシくらいジャンキーになっとるとかなり気合入れんと戻れんねん」

「…戻るタイミングも操作出来るんですか?」

 身を乗り出して訊いてくる群尾。

「…興味ありそうやな?おっぱい触るくらいならサービスしといたるで」

「おい!」

 掴みかかろうとする瑛子の手をバックステップでかわす女子高生。

 軽やかにふわりとミニスカートが舞った。

「あははは!冗談や冗談!」

「ちょっと待って」

 二人の間に割り込む群尾。



第三十三節


「…お仲間同士でいつもこういう試合やってるんですか?」

「おお、毎日や」

 敢えて視線を合わせずに身体をひねってお尻を見下ろしたりしている陸奥。

「じゃあ、その都度性転換を?」

「そういうことになるな」

 身体の横からパンパン!とお尻を挟む様に叩いてみる女子高生陸奥。女性特有のお尻の幅広さを確かめているかの様だ。

「…ボクらの仲間になってもらえませんか?」

「タクヤぁ!」

 瑛子はキレると呼び捨てになる。

「…」

 両手を頭の後ろに回し、軽く乳房を突き出す様にしながら考えている陸奥。

「ワシはかまへんねんけど、そこの般若はんにゃみたいな彼女はどやろか?」

「あんだとこら!」

「こわいわ~。取って食われそうやわ~」

 関西風におどけて言う陸奥。

「お願いします。折角のご縁なので」

「…」

 女子校生となっている陸奥は、上目づかいで考えながら鼻の頭をぽりぽり掻いている。瑛子の趣味なのか元の造形がいいのか、制服の良く似合うアイドルタレントみたいな可愛らしさだ。

「快く承諾したいところやねんけど、ワシ関東は今日までなんや」



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