長四木並絋の場合 15
第三十節
地面に絡み合う様に折り重なる二人。
ここまで全くいいところの無い瑛子にしてみれば起死回生のチャンスである。
目一杯相手を鷲掴みにしてイメージを流し込む。
「う…うわあああっ!」
押し殺した声がする。
至近距離でオシャレな制服が見慣れた庶民的な「女子高生」制服に変貌していく。
次の瞬間にはもう立ちあがっていたが、ふとももまで素脚がむき出しになっていた。
…やった。何だか分からんけど、相手をオンナにしてやったぞ!
「おねえちゃん、大丈夫?」
「へ?」
振り返るとそこには幼稚園児くらいの可愛い女の子がぺたんと頭を触るところだった。
第三十一節
「…」
また壁際に立っている三人。
目の前には大量の人々が行き交っている。
先ほどと違っているのは、一番左にダサい普段着姿の群尾、そしてクールに決めた…若干髪が乱れ気味だが…就活中にも見えるリクルートスーツの女子大生スタイルの沢尻瑛子。
若干身長が高く見えるのは、ワリバシみたいなピンヒールもあるが、年齢を二十二歳程度にまで上げられているためだろう。
そして、群尾たちの母校の女子の制服に身を包んだ美少女…陸奥海斗の変わり果てた姿があった。
「とりあえずルールはルールや。ワシの勝ちやな」
甲高い少女の声である。
何故かその可愛らしい制服が誇らしげである。
「いやー眼福やなこれ。ごっつ可愛いわー」
両手で軽くスカートを左右に広げるように持ち上げて見せる陸奥。
「バカじゃないの!恥ずかしくねえのかよ!男のクセに!」
吐き捨てる様だった。
偉く口の悪い女子大生である。面接は絶望的だろう。
「こちとらメタモルファイターやで?しかもジャンキーや。女子の制服程度にビビッとったんじゃどうにもならんわな」
「…戻れるんでしょ?」
「はぁ?」
見た目は大人になったのに全く大人しくならない瑛子が言った。
「メタモル・ファイトとやらはあくまでも能力を持つ者同士の紳士協定だから、お互いが合意した試合形式が終了したなら元に戻れるんですよね?」
敢えて大振りの乳房を抱きしめるように腕を組む陸奥。
「そっちの彼は最初から気付いとったようやけどな」
「…たあくん分かってたの?」
「確信はなかったけどね」




