長四木並絋の場合 11
第二十二節
「ま、最初は誰でもそやねんけどな」
「相手を変身させる能力…ですよね?」
「せやせや。てゆーか自分は一般人なのに、能力持ちの彼女と付きおうとるんか!ええ根性しとんな!」
「…まあ」
「何か悪いのかよ」
と、言ってはみたものの瑛子にもその理屈は分かる。
特に何の制限も無く相手を永続的に女へと性転換させ、女装させた挙句に好きに操れるとなれば、もしも仮にケンカしたりした場合、最悪のケースだと前後の見境の無くなった「彼女」に何をされるか分からないということでもある。
「すいません、戦うってどういうことです?」
「そのままの意味や」
「…何のために?」
「何のため?何やそれ」
「いや、だって必要も無いのに戦う必要ないでしょ」
「さっき一人ボコって来た。半殺しだよ」
これは事実だ。
「…まさかやけど、何も宣言せんと普通にド付き合ったんかいな」
「宣言?」
頭を抱えている陸奥。
「なんちゅーこっちゃ。まだそないな野蛮なプレイヤーがおったんかい」
「プレイヤー?」
これは群尾。
「一足飛びに結論教えたるわ。ワシらメタモル・ファイターたちはな、お互いに試合形式を了承した上での戦いである「メタモル・ファイト」をやるもんなんや!」
第二十三節
「メタモル…ファイト?」
「あんだよそのふざけた名前は」
「メタモルって、メタモルフォーゼ…変態…からですか?」
「へんたいって…」
「自分、学あるなー。せやろな」
「その何とかファイトってのは何なんだよ!?」
瑛子がイラついてきた。
「そんなに怒らんでええやろ」
「わりいな。バカでよ」
「…彼女、いつもこんな調子かいな」
話の通じそうな群尾に振る陸奥。
「いえ。それはともかく、「メタモル・ファイト」とは何なのか教えてください」
「…今日はファイトは無理やな」
頭を掻いている陸奥。
「言ってみればスポーツみたいなもんや。メタモル能力者同士、腕の試し合いや」
「…ちょっと待ってください。二つ質問があります」
「自分の方が話が通じそうやな。ワシに分かる事なら答えたるで」
「今日、僕らは初めて同類と戦いました」
「ふんふん」
「しかし、彼女…瑛子さんの…」
「おい!」
勝手に名前を言うな!と言う意味だろう。
「ゴメンゴメン。…彼女の能力は相手に効きませんでした。これはどういうことでしょうか」




