長四木並絋の場合 08
第十七節
「瑛子さん」
「何だよ」
「今日って、あの小太りの気配で同類だって勘付いたんだよね?」
「…結果としてそういうことになんのかな」
「それを応用出来ないかな」
「どゆこと?」
「仲間を探すんだよ」
「仲間…」
「今日見つけたのは幸か不幸か敵だったけど、もしかしたら同じ能力持ちでも悪い奴を狩って歩いてる仲間もいるかも知れない」
「…」
考え込んでいる瑛子。
「…余り気が進まないね」
「そう?でも選択の余地は無いかも知れないよ」
「何よそれ」
「今日はたまたまこっちが先に気付いたけど、あちらが先に気付く可能性もある」
「…襲われるっての?」
「どれくらいの頻度と分布なのか分からないけど、『能力者狩り』みたいなチームを結成して集団で動いてたとしたら?」
「…今度はあたしがターゲットってか」
「その前に仲間を集めておくべきだ」
「…」
かなり考え込んでいる瑛子。
「あたしの性格かも知れないけど、一匹狼タイプでね。友達と遊ぶぶんにゃつるむけど、こんな能力持ったもん同士がそんなに仲良くできるイメージが湧かんわ」
「だったら悪者狩りは自粛した方がいいかも知れないね」
「あんでよ」
「目立つだろ?」
「たあくん、あんだけバレないって請け負ってくれたよね?」
「情勢が変わったんだ。同類がそれなりの数で存在するってことになると、国家権力にバレなくても同類に嗅ぎ付けられる危険性が出て来る」
「…」
「しかし、黙っていても情勢が好転するとは限らない」
「どゆこと?」
「今日の小太りだって、自分の周囲の人間だけを餌食にしてたはずだ。にもかかわらず瑛子さんに捕捉された」
「…単なる護身術にしか使ってなくても嗅ぎ付けられるかも…ってか」
「そういうこと」
「たあくん、だったら離れた方がいいよ」
「何で?」
「能力者同士のドツキ合いってことになったらとばっちり食らうよ」
「そうだね」
「女子高生とかなりたくないっしょ」
「女子高生とは限らない」
「は?」
第十八節
「瑛子さんは言ってみれば自分と同じ立場の制服姿の女子高生に相手を変えられるけど、もしかしたら別の能力使いがいるかも」
「あたしがブレザーだから、セーラー服にする能力者がいるとかそういう話?」
「そう。もしかしたらバニーガールなんてのもいたりして」
「ふざけてる場合じゃないよ!」
電車の連結器のガタンゴトンと言う音が車内に響き、夕焼けの色が際立つ。
「…可能性の話さ」
「そう…だね」
また考え込む瑛子。
「だとしたら益々危険だね」
「一応ね」
「で?どうすんのよ」
「足手まといにならない様にするさ」
「悪いけど戦力にならんだけならともかく、人質とかカンベンなんだけど」
「…物陰に隠れたりするよ」
「真面目な話よ」
「うん。迷惑を掛けないためにはそうするしかないかも」
「あたしの考え方が参考になんのか分かんないけど、やろうと思えば人の首絞めて殺すくらいは楽勝で出来るかもしれない」
「出来ると思うよ」
「でも流石にそれはやらんわ。殺人鬼じゃないんだから」
「だろうね」
「つっても、遠慮が要らないとなれば相手を女の子にしまくったりはするね」
「…殺すのに比べれば罪悪感が少ないからね」
「そーゆーこと」
「あたしの言いたいこと分かるよね?死にはしなくても、そういう被害に巻きこまれるかも知れないって言ってんだよ?」
「それは瑛子さんも同じさ」




