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長四木並絋の場合 04


第六節


「…お待たせ。ちと残務整理があってね」

 ネクタイを緩めている長四木並絋ながしき・へいこう

 締まりの無い体格である。

「…先生…」

 爽やかで可愛らしいミニスカートの制服もまぶしい女子生徒が座り込んでいる。

 ここは体育館の隅にある「体育準備室」である。

 ステージ裏ではなくて隅で、マットや跳び箱、平均台などが詰み上がっている。

「いいのかな~?教師に逆らって」

「でも…」

「知らなかったのかい?日本国憲法には女子生徒は男性教師に奉仕しなくてはならないと書いてあるのさ」

「そんな話…習ってません」

「そりゃ教えないよ。非公開の一〇七条に書いてあるんだから。これはあらゆる法律に優先されるんだよ…もしもここで起こったことを誰かに言ったりしたら…分かってるな?」

「田中くんはどこに行ったんですか?」

「田中?…ああ、あいつか」

「昨日から行方不明らしくて…」

 迫ってくる長四木。

「さて、どうかな?中々いい反応をしてくれたが」

「…何言ってるの先生…?」

「さあ!いいから」

「きゃあああっ!」

 身をよじって逃げようとする女子生徒の髪の毛を掴んで引き寄せる。

「痛い!いたあああああいっつ!」

 哀れにも首を後ろに引っ張られて転倒してしまう。

 あられもなく下着まで見えてしまう女子生徒。

「逆らうなと言ってんだ!心配すんな。お前らみたいに乱れた不健康な生活してればちょっとやそっとじゃ妊娠しねえよ」


 炸裂音がした。



第七節


「きゃああああーーっ!」

「…!?」

 余りの大きな音に女子生徒は悲鳴を上げるが、長四木は大声は上げなかった。

「…テメエ…」

 般若みたいな表情のストリートガールが指を鳴らしている。

 目の前にはだらしなくズボンからシャツの裾がはみ出した男と、乱れた制服の女子高生である。何が起こっていたのかは余りにも明白だった。

「あんたは帰りな」

 冷たく言い放つ瑛子。

「…で、でも…」

 唇が紫色になってガタガタ震えている。

「スプラッタ・ショーを見せるにゃあ忍びないんでね」

 瑛子は余り女子高生の方を見ていなかった。

 群尾は咄嗟に察する。

「…何だこれは?お前が呼んだのか」

「違います!違うんです!」

 女子生徒が必死の形相で否定する。

「…そんなことしてタダで済むと思ってんのか?あぁ?」

「違うんです!本当に知りません!」

 涙と鼻水でグチャグチャだった。美少女も台無しである。

「待てよ!何だよそれは」

 まるで邪魔者みたいに扱われている瑛子が膨れる。

「あー、ちょっといいですか?」

 群尾が手を上げた。



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