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長四木並絋の場合 03


第四節


 自分が通っている以外の高校に来ることなんて滅多に無いよなあ…などと周囲をキョロキョロしてしまう。

 廊下に掛かっている誇らしげなトロフィーや、美術部員が描いたのであろう巨大な油絵などは、母校として通っている生徒たちには日常の風景なのであろうが、エトランジェにはいちいち物珍しい。

「たあくん…やっぱりあいつ怪しいよ」

「…そうだね」

 余りにも特殊な能力持ちの彼女を信用するしかない。

 しっかし、どいつもこいつも…変態エロ教師のやることはワンパターンだな。校内で人気のないところに生徒を誘い出していいことしようってか。

 親にチクれば内申書をボロボロにするだの、この辺に住めなくしてやるだのと脅しを掛ける。

 畜生どもが…成敗してやる。


 かなりの距離を歩いたと思うと、体育館らしきところに向かった。



第五節


 何とも生活感に溢れる校内だ。

 あちこちに生徒の私物らしい上履きだのスリッパだのがあり、心なしか校舎全体が汗臭い。

 廊下にずらりと並んだ水道の蛇口は大抵一つは折れ曲がったりしている。


 ギリギリ視線の先にいた小太りは、体育館入口の扉を閉めるところだった。持ってきていたらしい鍵をガチャン!と降ろす音が聞こえる。

「やった!」

 物凄い勢いで走ってドアに引き戸に取りつく瑛子。

 何とか追いつく群尾。

「…どうするの?」

「野郎、絶対に何かやってる」

「何で分かるんだよ」

「声がしねえから、今体育館は誰も使ってないってことだよな?」

「…そうだね。屋内スポーツの部は今日は練習休みらしい」

 瑛子たちの通う高校では普通にバレーやバスケット部が日曜は練習しているが、そうでない高校もあるのだろう。

「だったら何であのデブ一人っきりで体育館に入って鍵掛けてんだよ!やらしいことやってるに決まってるだろうが!」

 群尾も必死に頭を巡らせた。

 ここは神聖な(?)高校の中だ。恋愛は自由だから、それこそ恋人とプレイに及んでいたとしても一向に構わないのだが、場所を選んで欲しいと忠告することは出来る。

 こんなところまで尾行した挙句に注意喚起のみというのもマヌケな話ではあるが。


 もしもそれ以外の公序良俗に反することだったりするならば…遠慮はいらないってことか。生徒と関係に及んでいたとするならば、合意の上でも違法性を問える。

「行こう。瑛子さん」

「おうよ」

 めりめりと音がして金属製のフック型鍵が変形し、引き戸が開いた。



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