長四木並絋の場合 02
第二節
安っぽいスカイジャンパーにデニム地のミニスカートというストリートファッションで決めている瑛子。一方で隣の群尾はチェックのシャツにチノパンである。
クラス委員にヤンキーという取り合わせだが、相思相愛のカップルでもある。
人気のまばらな電車に座って少し離れたところに座っている男を視線で監視している。
瑛子はこの能力を正直持て余していた。
別にレディースのグル―プを作って君臨したりしている訳ではない。
正義感の強い瑛子は特に男が一方的に女性に対して暴力を振るうのが許せないので、折角ならと週一で勝手にボランティアと称してパトロールしているのだ。
とはいえ、ごく普通の民間人にそうそう目立った事件と遭遇する機会が訪れる訳も無い。
それでも夜の繁華街で出くわす暴力事件を仲裁する程度のことは何件もこなしていた。
だが、空振りも多い。
特にこの所、ごく普通の人間にしか感じられない人間相手にも何故か妙な「感覚」を感じることがある。
それで後を付けるのだが、大抵は自宅に帰り着くかオフィスに帰って行くか程度。その先まで追いかけられる訳ではない。
群尾はそんな気まぐれみたいな瑛子の行動に文句ひとつ言わずについてきてくれる。
第三節
「…今日って休日だよね?」
「一般的にはそうかな」
モロに日曜日だから休日に決まっている。
とある駅から降りた小太りの男は迷わず高校へと入って行った。そこまで追いかけてきたのである。こういう時にスイカは便利だ。
「あいつ…教師か…」
「雰囲気的にはそうだけど」
「何をやってやがる」
「別に学校の先生が休日に学校に来るのは不自然じゃないよ」
事実校庭では幾つかの運動部が練習をしている声が響いている。
「いや、臭いね」
「瑛子さんのカンは当たるからなあ…」
瑛子は迷わず校門をくぐり、後を追った。
意外なことに平日はあれほどの警戒をしている校門は、休日であるためか門衛すらいない。チェックもされなかった。
「不用心だこと」
「まあね」
小太りは一度職員室らしき大きな部屋に立ち寄り、そして別の棟に向かってスリッパをパタパタと言わせながら歩いて行く。
かなりの距離を取ってはいるが、校内に全く人気が無いのであちらが気配に気付いて引き返して来たらそれだけでアウトだ。
最も、校内が人で溢れていたらそれだけでとっくにアウトなんだが。




