陸奥海斗の場合 07
第十一節
「相撲決着にした理由が分かったかいの?」
「そういうことか」
ちなみに二人とも元に戻っている。
「メタモルファイター同士の戦いは基本は互角や、腕力は幾ら鍛えてもメタモルファイトには影響せえへん。しかし、「コツ」めいたものは影響するわな」
「ふんふん」
「それと、服装や。何と言っても服装やな」
「タイトスカートがあんなに動きにくいなんて…」
「気付かんと全力で走っただけでこけよる。あそこにハイヒールまであったら一発やで」
「しかし、だとしたら相撲決着はアンフェアなんじゃないのか?そっちが一方的に有利だろ」
「んな訳あるかい。変身するところまで行かなんだらええやないか」
「…そうか」
「大体、ワシかて自分の能力を知らんとやってんねんで。自分がOLの制服やったら条件同じやないか」
「…しかし、リクルートスーツとは…」
「パンツルックとタイトスカートと、ストッキングのあるなしで大雑把に3種類のモードがある服やからな。最初はパンツで油断させてスカートで引っ掛けんねん」
こんな戦い方があったとは思わなかった。もっとも、「変身ありありの相撲決着」を了承させた陸奥の口車も見事と言える。
「ワシは関東は今日までやねん」
「そうなのか」
「名残惜しいか?」
「まあね」
「惚れても無駄やで。先約あるからの」
「というと?」
「彼女おんねん」
「それならこっちも」
「さよか。…言うてへんやろ?」
それがメタモル体質のことは言うまでもない。
「そりゃね」
「言われへんわなあ…負けへんかったらええねんけど、勝ち負け関係なく結構食らってまいよるから」
「だよな」
「それにしても関東もんは引っ込み思案過ぎるで。負けても死ぬわけやないんやからもっとガンガン戦わんかい!思うで」
「関西ではもっと盛んなんだ」
「勿論能力者同士でやがな。まーよー考え寄るわっつーくらいにオリジナルルールこしらえて今日もきゃーきゃーやっとるわ」
その「きゃーきゃー」がリアルに「女性の嬌声」であるのがポイントだ。
「ともあれ、今日は楽しかったで。そうそう「THD」やけどな」
「そうだった。教えてくれ」
「有利な衣装の特徴や「T」は「タイトスカート」」
「え…」
「「H」は「ハイヒール」や。ワシなんぞ2つもあてはまっとる」
「そうだったのか…」
「自分は両方とも当てはまらへんなあ」
にやりとする陸奥。
「「D」は?」
「それは内緒や」
「え…」
「勝ったのはワシなんやで?ここまで喋ったのもサービスや。達者でな。また会うこともあるやろ」
陸奥は爽やかに去った。
*橋場英男 メタモル・ファイト戦績 六勝二敗一引き分け一無効試合 性転換回数九回




