陸奥海斗の場合 01
第二章 陸奥海斗の場合
第一節
「ほんなら行くで」
橋場英男は緊張していた。
目の前には格好いいブレザーに身を包んだ背の高い男がいる。
こちとら制服とはいえ「オスガキ」丸出しの学ランだ。それこそ運動部所属で丸刈りなんてことになってないだけマシだった。
修学旅行がてらやってきたと称するその男は同じく十六歳で陸奥海斗と名乗った。
今までの相手と違うのは、こいつも言ってみれば「自分よりも強い奴に会いに行く」タイプのプレイヤーだったことだ。
橋場の初期がそうだったように、自分の能力に戸惑い、試行錯誤を繰り返してきたタイプではなく、最初から「メタモル・ファイト」に特化して能力を使ってきたタイプなのだ。
第二節
「自分、強いやろ」
「つよい」の「つ」にアクセントを置いて陸奥は言った。
「自分」は関西においては二人称で使われる。「お前」と言う意味だ。これが非関西人には慣れるまで戸惑うところだ。
「…何の事かな」
「あかんで。隠しても。同類は分かるもんや」
橋場とて極端に引っ込み思案という訳ではないが、関西人の「人類皆きょうだい」と言わんばかりの初対面からずけずけ来る感じが苦手だった。
「自分、アキバのメタモルカフェ知っとるやろ」
「え…」
「だっはっは!そんなリアクションしてもうたら白状してんのと一緒や」
陸奥と名乗った男は橋場よりも頭半分背が高い。黙っていればその制服も相俟って非常にイケメンである。雑誌モデルの様だ。
「そないに警戒せんでもええやろ。メタモル・ファイトしよか」
「…いいけど、条件がある」
「条件決着やな。望むところや」
そうとう戦い慣れた相手らしい。
「…変身決着はどうだ?」
「完全に変身してもうたらそっちが負け言う奴か。あかんあかん!駄目や!」
手を大きく振っている。
「…何故?」
「分かってへんな。お互いの能力が違うのがメタモルファイターやで、相手を変身させ、こっちも変身させられて、その上で頭を使うのがおもろいんやないか」
「じゃあ、最後まで行くのか?」




