プロローグ 02
「調子に乗ってんじゃねえぞクソガキが…お前ら生徒の運命なんかなあ、俺ら教師が握ってんだぞ?内申書に何を書かれてもいいのか?あぁ?」
椅子を引いて立ち上がり、机を回り込んで正面に立つ教師を名乗る男。
「いえ、困ります」
「だよなぁ?だったら知ってること全部言えや」
「何の事だか分かりません」
「とぼけんじゃねえ!!」
突如胸倉を掴んで引きずり回す教師。
「やめてください!先生!」
男子生徒はそう言って嫌がるが、手を後ろに組んで可能な限り抵抗をしないように心掛けている様に見えた。
体力が無いのか、教師は二三度引きずり回すともう息があがり、ふうふうと言いながら手を離した。
「佐藤に何を吹き込まれた」
一瞬ギョッとする男子生徒。隠し事は苦手のようだ。
「いえ、何も」
言い終わらない内に男子生徒の左の頬に教師のパンチがヒットした。
「っ!!」
よろめく男子生徒。
「調子に乗るなっつったろうが…いいか?テメエの将来なんぞ、教師の胸先三寸でどうにでもなるんだぞ?」
「知りません」
「いいのか?お前がどれだけテストでいい点とっても俺が内申書にムチャクチャ書けばどこにも進学出来ねえぞ?例え大学入試で合格点取っててもだ。知らんだろうが」
正面を見据えてじっと耐えている男子生徒。気丈に振る舞っているが喰いしばった唇が小さく震えている。
「…知りません」
目を見開いて男子生徒を凝視する教師。
「いい覚悟だな?俺らのネットワークは強力だぞ?実は万引き常習犯とかいう情報回してやろうか?でっちあげかどうかなんぞ判定する能力はありゃしねえよ。教師と生徒とどっちが信用されるかなあ?」
「どうでしょうかね」
「テメエ…何だその態度は?…教師に向かってそんな態度取っていいと思ってんのか!」
「…」
必死に感情を押し殺しながら教師の方を観る男子生徒。
「思いません」
「だよなぁ?俺に逆らったらタダじゃ済まさねえぞ。こちとら内申書握ってんだ。お前の一生ムチャクチャにしてやんぞ?」
「…先生は自分の心配した方がいいんじゃないですか?」
「…何だと?」
「ボクが黙っていてももう止められないと思いますが」
「うるせえ!知ってるんだな?知ってるんだなぁ!?」
耳元に口を近づけて怒鳴る教師。