シンタロウ・オガタの場合 15
第十七節
「俺はシンだ。よろしく」
「あたしはキャサリン。キャシーでいいけど…そのシンがこんな田舎のバニーズバーに何の用よ?もしかして追っかけ?」
ラフなジーンズ姿なので、妖艶なバニーガール姿のイメージが湧きにくい。
「いやいや、それならいいけどそんないい話じゃない」
「よく分からんなあ。あんたジャパニーズだよね?」
「一応ね」
「甥っ子がゲーム好きでさ。映画にもなったじゃん。バイオハザード」
「…そうなのか」
「なったなった。何か日本っぽいみやげとか無いワケ?ドラゴンボールのおもちゃとかあればここのホステスには大もてだよ?」
「そうなのか?…生憎何年も帰ってないんだ」
「なーんだ」
肩をすくめるキャシー。
「…ともかく、お客じゃないんだったらこの辺にしとくんだね。あいつらまっとうなスジのもんじゃないから」
「何となく分かるよ」
「ホントに分かってんの?」
「そういう奴らを相手にすることが多くてね。心配してくれてありがとう」
「同伴出勤してくれるんなら有難いけど?」
「いや、やめとこう。時にキャシーの悩みはあったりする?」
「何よ突然。あんたが解決してくれるわけ?」
「ものによっては」
「ふーん…まあ、バニーの一人が最近やめてさ。慢性的な人手不足なんでちょっと困ってるかな」
「キャシーはマネージャーなんだ」
「…マネージャーは男がいるけど…一応女代表でバニーを取りまとめる役割ね」
「偉いんだ」
「大統領ほどじゃないよ。大統領はスケジュール調整のシフト表作ったりしないでしょ」
「そうだな…。ってことは黒バニーか」
黒いバニースーツを着られるのは職場のリーダーである…らしい。
「…あんたマニアなの?良く知ってるね」
「…ちょいと縁があってね」
「彼女がバニーとか?元か」
首を振るシン。
「あによ。やっぱりバニーみたいな水商売女は嫌だってか」




