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シンタロウ・オガタの場合 07


第六節


 店は盛況だった。少なくとも見かけ上は。

 最初の内は物珍しかったらしい隅に座っていた東洋人もすぐに気にならなくなる。

 つけっぱなしになっていたロクに見えない小さなテレビからはアメリカンフットボールの試合が流れていて、何か起こる度に大騒ぎだ。

 夜に近づくにつれて客は増えていく。


 日本の居酒屋だったら隣の団体客に声を掛けるというシチュエーションも珍しいんだろうが、ここでは濃厚に絡み合い、言い争いからの取っ組み合いが2回も起こった。

 3回目で睨むとやっと座る。

 流石はテキサス、血の気が多い男揃いだ。


「盛況じゃないか。千客万来」

「この辺じゃウチみたいな店は二軒しかないから」

「もう一軒あるんだ」

「あるけど、あちらは高級店だし、お酒を飲むというよりは…ね」

 何となく予想は付く。性風俗店ってことだろう。

「…これだけお客が入ってるのに浮かない顔だね」

「みんなツケだもん」

「…はぁ?」

「景気がいい時は後先考えずに使っちゃうし、景気が悪くなっても似たようなものでね」

「冗談じゃない。ちゃんと払わせないと」

「みんな子どもの頃からの顔馴染みばかりだし…」

 やれやれだ。これじゃどうしようもない。

 かといって、シン自らが絞り上げるというのも違う気がする。

「…今日、俺は都合三回ケンカを阻止したぜ?」

「ありがと」

 笑顔。

「ご褒美が欲しい」

「…こんなおばちゃんと何かしたいの?」

「メグの身の上話が聞きたい」

 しばし沈黙。

「面白くないわよ」

「それはオレが決める」

 似合っているかどうか分からんがウィンクしてみた。



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