表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シェへルティアの黒狼騎士  作者: 夏萌
第一章 ミクベクレンの森・前編
9/44

8話 想像と創造

長い間ほったらかしてしまいました。反省。

 


 葉擦れの音が大きくなり、黒い影が姿を現した。


 黒い毛皮、俺の倍以上ありそうな体躯、太い二対の手足。

 それは………




 熊だった。


 なんだ、魔物じゃなかったか……


 これならロロがいれば…………………………


 ……って今いないから‼︎



 ホッとしてる場合じゃない。早く逃げないと。


 でも……逃げ場がない。

 この地形がまずかった。三日月型になっているせいで逃げられる経路が狭まっているのだ。


 熊と遭遇した時の対処法で背中を見せずにジリジリと後退するっていうのは有名だけど、今の俺は一歩下がったら頭ぶつける状態だよ。

 後ろに下がれない場合の対処法も必要だと思います。


 ここから逃げ出すならむしろ一旦熊に近づかないといけないし、仮に逃げられても追いつかれる。確か熊って(オレ)より速いんだよ……


 それに逃げ回って森の中で迷子になるとか、他の動物、最悪なのは魔物に遭遇するとか状況が悪化する可能性が高い。


 これがもし崖上だったら父さんの所まで全力で走るという選択肢をとった。そもそもロロがいれば問題なかった。


 いざ振り返るとロロ任せな自分に呆れる。



 さて、今俺のとれる自衛手段は……

 ①取り敢えず走って逃げる。

 →迷子、新手の動物又は魔物との遭遇(エンカウント)の可能性アリ。

 ②気合でほぼ垂直の崖を登る。

 →まず…ムリです。

 ③魔法。

 いや、一回も成功してないのにナニイッテンノ?って感じだよね。うん。

 でも俺としてはこう…火事場の馬鹿力的なのを期待したい。

 ここは②→③→①で試して行こう。


 熊は様子見しているのか四肢を地につけた姿勢で動かない。


 俺は数歩前進しクルッと回るのと同時に崖に向かって走り出す。大した助走は付けられないが獣人の脚力で2m以上跳躍する。そのまま壁面を足で蹴りつけ、廻りながら上るイメージで斜めの軌道を描きながら跳躍を重ねる。



 数秒後、俺は地面に着地しようとしていた。もちろん崖の上ではない。

 流石に垂直の崖を登るのはムリあるよな。知ってた。


 足が土に触れたのと同じくして熊がこちらに突進してきた。

 日頃の鍛錬の成果か火事場の馬鹿力か、指先に集めた魔力光で素早く魔法陣を完成させる。(使えないのに高速で描く練習してるとかイタイとか今はそんなことどうでもいい。)


 描いたのは【跳躍ヴォルト】の魔法陣。

 魔法陣は足元に直径1mの大きさで転写され、金色に輝く。


 しかしやはり光の消失とともに魔法陣は霧散してしまった。

 今更ながら回避行動よりも魔法を選択した判断ミスに歯噛みする。




 あぁ 間に合わない。

 こんなとこで、こんなことで死ぬとかやめてくれよ。

 俺にはやることがあるのに。


 最初から素早く逃げていれば、今ここで熊に追突されて噛みつかれることもなかったのに。


 驕りと油断、魔法への執着が俺の判断を誤らせた。


 なんでいつも俺は学ばない……!





 "…○※△■◎▽"


 頭の奥で声が響く。名を呼ばれたと感じた瞬間、チリっと脳を焦がしてボヤけた映像と音声が再生される。



 "…いい?本当に危なくなった時だけ、今私が言った通りにするのよ……"



 声が遠ざかると一瞬にして意識が引き戻された。

 いつの間にか指先には魔力光が灯り、見たこともない魔法陣が描かれている。


 見たことはないが法則性から攻撃魔法だと分かる。


 そのまま魔力光が消失することなく魔法が発動する。





 閃光。砲声。


 バキッ ミシシ バキャ


 そして衝撃で木々を薙ぎ倒す音が数十秒に渡って続く。


 目と鼻の先に迫っていた熊の姿は見当たらない。

 前方の森林にはポッカリと穴が空き、数百メートル先まで見通せる状態だ。

 木や木の葉の切断面は焼け焦げており所々で煙が立っていた。



 唖然とする間も無く、頭痛と倦怠感が襲ってくる。

 急激な魔力消費による副作用だ。



 だが、早くここから逃げなければならない。

 ふらつきながら足を踏み出した。


 心臓が早鐘を打つ。

 落ち着け。パニックになるな。




 自分の魔法により切り開かれた空間の数百メートル先。そこには黒い粒子を撒き散らす暗黒の塊があった。

 その三分の一は不自然に欠けている。




 ……手負いの魔物が迫っていた。



ここまで読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ