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番外編1

『エロを好む雄』という意味で悪意ある作者に『江口好雄』と名付けられた、とメタ発言をしてみる。さんずいのことは気にしてはいけない。

 そんな俺が今日も今日とて本屋でエロ本を立ち読みをしていると、

「またお前か! いい加減にしろ!」

 昔ヤンチャだったという女店主に見事なコブラツイストをキメられた。

 激痛とともに奇妙な快感が俺の体を突き抜ける。

「いや、いつも買っていってるんだから、ちょっとぐらい立ち読みしてもいいでしょ?」

 すると店主は、イギリス貴族の血を引く日本の不良高校生みたいな口調で「だめだね」と言い放ち、

「お前がエロ本を読んでいる時のニヤケ顔が気持ち悪すぎて他の客がドン引きなんだよ! ちったぁ自重しろ!」

 その意見に俺は即座に言い返す。

「でもさぁ、たわわに実った果実を見て笑顔になるのは男として当然の反応だと思うんだけど。母性の象徴、最高! ……んがが」

 痛みが二割増しになった。

「それは私に対する嫌味か、あぁ!?」

「いでで……ひ、控えめも結構好きだぜ俺は。それを恥じらうの女性も萌――」

 体から変な音が鳴った。

 セカイガトテモクライデス。


 ――――――……。

 意識がブラックアウトしてからどれくらい経っただろうか。

 目を覚ますと、店舗奥の事務スペースにあるソファーの上で寝かされていた。

 壁にかけられた時計を見ると、既に閉店時間を過ぎていた。

 その時、店の掃除を終えたであろう店主が現れた。

 彼女が手にしているモップを壁に立てかけ、エプロンを脱ぐ。

 そして、こちらに向かって、

「おぅ、起きたんならとっとと帰れよ」

 と言って俺の額を小突いた。

 俺は額を押さえながら言う。

「自分で気絶させといてその言い方はないんじゃないの?」

「てめーの自業自得だろ。このエロガキが」

「エロは大事だよ。男女が組んず解れつエロいことしなきゃ人は生まれてこないんだぜ? エロは偉大なんだよ!」

「おいおい、もうちょっと言い方ってもんをだな……」

「例えば?」

「え、と……それは……」

 顔が紅潮している。

 彼女は意外と純情なところがあるので、こういう下ネタは苦手なのだ。

「例えば、何? ねぇ教えてよ。人生の先輩としてさ」

「あ……ぅ……」

「ねーねー、おーしーえーてーよー」

 まるで、なんでなんでと質問を連発しまくる幼児のようだ。

 調子こいて、しつこく訊いていると……、

「あー、五月蝿い!!」

「ごりゅう、ふ!!」

 鉄拳が飛んできた。

 室内なのに流れ星が見えた……ような気がした。

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