表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

第3話その3

 翌日の放課後。

「ほー、そんな事がね……」

 俺が昨日の事を話すと、江口は抹茶塩をこれでもかと振りかけて緑化したフライドポテトをつまみながら、あまり興味が無さそうな声を漏らした。

 ここは和風ハンバーガーショップ・幕道奈留堂。

 ファストフードチェーンの大手で、特製醤油ソースバーガーが人気……というのは今回の話には全くもって関係ないわけで。

「何だよその、どうでもいい感満載の言い草は」

 と俺が訊くと、

「だって俺、美月先輩一筋だもん」

 と返してきた。

 だが長年、彼の親友をやっている俺や氷室には、そのポテトを咥えた口の端がピクリと動いたのが「ちょっと羨ましい」という心情の現れであると容易に想像できた。

「……はぁ、まぁいいけど」

 すると、今までピリ辛納豆バーガーを頬張っていた氷室が上唇と下唇の間で糸を引きながら言った。

「流斗、そんなラッキースケベを自慢するために、ここに寄ったわけではないだろ? 早く本題に入れ」

「ラッキースケベじゃねぇよ、立派なセクハラだ。あと口を拭け」

 ……いや、セクハラに立派もクソもないか。

 頭の中でそう呟きながら、言われた通り本題に移る。

「で、今日集まってもらったのは……これだ」

 俺は鞄から一枚の紙を取り出し、テーブルの上に置いた。

「昨日、部屋の中を調べていたらこれが出てきた」

 それは古びた見取り図である。

「かなり年季が入っているな」

 ああ、と答えてから俺は、

「俺の部屋、元々は父さんの書斎でさ、だから多分父さんの物だろうと思って訊いてみたら……」

「みたら?」

「おお、懐かしいなって意味深な笑みを見せただけで、それ以上は何も話してくれなかった」

 怪しいな、と江口は呟いた。

 見取り図に視線を移した氷室は顎に手をやり、

「ふむ、この建物……旧校舎か」

 学校の旧校舎。

 現校舎の図書室に収められている資料によると、今から百年近く前に著名な建築家――髭が異様にカールした紳士の写真が掲載されていた――によって建てられたそうだ。

 その歴史的価値から、現在の校舎が建てられた後も綺麗に管理・保存されている。

 数年前に放送されたアニメの主人公が属する秘密結社の基地のモデルになったらしく、ファンの間で聖地化しているとかで、その年の地元の観光客の数が例年の三割増しになったという。これがクールジャパンという奴か。

「見たところ一階部分のようだが、この美術室部分の赤い印が気になるな」

「まさか、あの伝説のお宝の在処を示しているとか!?」

 江口が驚きの声を上げた。

 そう。旧校舎にはお宝伝説がある。

 戦国時代に活躍した武将の埋蔵金あるいは世界にその名を轟かせる大怪盗が盗みだした宝石が隠されているという非常に胡散臭い伝説である。

 過去に幾度と無くお宝発見に挑戦した者達がいたが、いずれも徒労に終わっているらしい。

 しかし、ただの紙切れ一枚を即座にお宝伝説に結びつけてしまうのは早計だろう。

「んな馬鹿な」

 俺が呆れ気味に言うと、

「じゃぁ、いっぺん確かめに行ってみようぜ。明日の夜、学校集合な。うは~、テンション高まってきた!」

 興奮を抑えきれない様子の江口は考え無しに、そんな事を言い出した。

「えぇ? いきなり過ぎないか?」

「流斗ぉ、ボヤボヤしてっと、もしお宝があった場合、先に誰かに取られっちまうだろうが。何しろ現在の価値でン千万はくだらないらしいからな」

 それに対して俺は赤い印を視線を合わせながら言った。

「いや、これが何を示しているのか分からないし、それにお宝は今まで誰も見つけた事がないんだから、そんなに焦らなくても。もっと色々と調べてからでも遅くはないんじゃ……」

「それは俺が今晩、徹夜でやっておこう」

 さっと手を上げて氷室が言った。

「おいおい、氷室まで」

「んじゃ、決まりだな」

 溜め息が出た。

 結局、賛成:二・反対:一により、お宝探索に赴くことになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ