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8、

「ちょっと待て、授業免除期間ってなんだ?」


 はぁ~。とため息を再び漏らす梨花。とてつもなく説明をするのがだるいという雰囲気を醸し出している。


「わ、わたしが言う! なっちゃんいいよね?」


「ま、まあ。ももちゃんがそこまでいうなら」


 ここで選手交代。かつ、孝明にも勝利の兆しが見えた。


(桃になら……ツッコミ勝ちできる――!)


 とは思うけど、桃は結構真剣な表情をしている。


「えっと。授業業免除期間っていうのは、いわゆる、授業を受けなくていい期間のことで、それをすぎると今まで通り、授業に参加しなくちゃいけないの。――孝明の今回のランキングは金持ちになるランキングだったから免除期間は約一年」


「な、なるほど……じゃあ、桃たちはそろそろ授業に参加しないといけないのか」


「ううん。わたしたちは卒業するまで授業免除」


「ふーん」


「うん」


「へー………………卒業まで免除ね」


 いいな。それ――


「って! ちょっと待った!」


「ももちゃん、いいですか?」


 ここでまたもや選手交代。


「落ち着いてください」


「お、落ち着けって……た、確かに授業一年間免除はいい話だけど……これじゃあ、あまりにも理不尽だ」


 孝明の思う理不尽は簡単に言うと、なぜ、俺は一年間でお前たちはずっとなんだ? ということである。


 これは一種の差別だ。


「はぁ……これだから自画自賛の変態妄想野郎なんです」


 さっきより七文字追加され、さらにひどい言われようになった。


「だ、だってそうだろ? 理不尽だろ?」


「まあ、悪い意味でそうです」


 悪い意味。孝明は悪い意味でとらえてしまったのか?


「まあ、良い意味なんて存在しませんが」


「それって、俺を完全否定してますよね!」


「いいえ、同情はしますよ?」


 そ、そんなの初歩の初歩的な感情で、


「それ以上はどうも思いませんが、あ~。間違えました。今は自画自賛の変態妄想野郎とおもっています」


「も、もういいです。話を進めてください」


 そして、梨花はその場の空気を鼻で笑い飛ばし、話を続ける。


「質問です」


 そういうと、梨花は真剣に怪訝な顔を俺に向ける。そして――


「――あなたのランキングは誰かを幸せにすることはできますか?」


「だれか、を……」


 誰かを幸せに? どういうことだ?


「そうです」


 やや、黒味が強い碧眼が孝明の瞳をとらえる。


 まるで、答えなど一つしかないでしょ? と訴えかけてくるように。


「俺、しか、幸せには……ならない」


「そうです。多少、ランキングのニュアンスが変わっていれば現状は変わっていたと思われます。ただ、今回はこれが真実なのです」


「……」


 言葉が出ない、わけでもない。言いたいことは山ほどあるのだ。


「まだなにか?」


 ただ、こういうきっかけが欲しかっただけだったのかもしれない。


「お前たちは――どんなランキングだったんだよ?」


「ぅっ! そ、それは……」


「昨日、担任に職員室に呼ばれて、言ってたぜ? ランキング上位者の心得は決して、相手に気遣い、あえて、ともに自分のランキングを明かさずにいることではなく、互いが互いのランキングを把握したうえで、理解したうえで仲良くなることが大切だとよ」


「お、おお母さんめ! いい機会だと思って孝明くんを使いましたね……!」


 小声で梨花はなにやら言った。


「なんだって?」


「――っ! くっ! し、仕方ありません。言いましょう。言ってやりましょおおお! 聞いて驚かないでください!」


「今更……驚く方がおかしい」


「き、聞かないなら、い、今のうちです!」


「聞きたいです!」


「うぅ~~」


 半泣き状態の梨花はとても幼く見える。まるで年相応のようだ。まあ、梨花も孝明と同い年だけど。ただ、蒙洋梨花は少々、大人びて見えすぎるのだ。


「わ、わかりました……。で、でも! 聞かないなら――」


「教えてください!」


 そして、孝明は膝を折り曲げ、梨花と面と向いていた瞳を床に向ける。いわゆる、土下座だ。


「――っ!?」


 もう、どういっても孝明は引いてはくれないと理解したらしい梨花はつ――。


「すぅーーはぁーーすぅーーはぁーー。よし」


 梨花はとうとう心に決めた。


「い、いいますよ? いいですね?」


 ごっくん。息を呑むのと同時に首を振る。そして――



「――き、きききキスの、あ、ああああじはい、イチゴ味、――らら、ランキング! です!」



「……はい?」


キスの味はイチゴ味

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