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6、

 思わずランキング掲示板を見上げる。とその時、孝明は思った。


 ――これはちゃ、チャンスではないか?


 理由は簡単だ。今日のこのランキングを糧に昨日のあの金持ちランキング一位は誤りだったってことにできたら。


(だって、最下位だぞ? いくらくだらないランキングでもそんな不幸なやつが将来金持ちなんかにはなれねえだろ?)


 周りがざわめきだってきた。そこで孝明は大きく出る。


「みんな! 聞いてくれ! 今、わかったと思うが、今日のランキングが正しくて、昨日のあのランキングはおかしいんだ。わかってくれるか?」


 先輩、後輩お構いなしの口調だ。それでも、今の音量ならここにいる全員に聞こえたはずだ。半分声が裏返った感じはするが、結果オーライになるならなんでもかまわない。


 しかし、ここにいる生徒たちの反応は孝明が思っていたような反応にはならない。


「なるほど、森孝明の将来は確実に安定、か」


「よけい、見逃せない――!」


「は、はあ? ま、待ってくれ! みんな、最下位なんだぞ? いや、なんですよ? おかしいですよね?」


 そして、ゆっくり孝明は電子掲示板に乗っている○○ランキングの場所に目をやる。最初、見た瞬間、うわ、最悪だ。いや、もう最悪のレベルを超えてる。と思った。なんでみんなはこうも孝明に執着するのか、全く分からない。


 ――が、ちょっと、頭をひねらせ、考えてみた。


 ――幸せにはなれないランキング。


 なんて、最悪なランキングなんだ。万が一、今回このランキングで一位になってしまったやつがいたら同情する。と、そんなあまい考えをしている場合ではない。


 だって、孝明の今回のランキングとこのお題を重ねて解釈すれば――こうだろう。


 ――幸せになれるやつランキングで孝明は一位。


 将来が幸せであると確定したようなものなのではないだろうか。そして、それを昨日のランキングと重ねると……。


「ちょっ、――さ、さよなら~~」


 こんな結論は当たり前なわけだ。


「あ! 逃げた! 捕まえろ!」


「十人グループを作って、森孝明を挟み撃ちにしろ!」


「わかりやしたああ!」


 孝明はまたもや追いかけられる羽目となった。そのほとんどが女子。君たちはどれだけ金に飢えているの? と素で聞きたくなる勢いで孝明を追い詰めていく。そして、追いかけられているときの……記憶はない。


 そして、あの教室の前までくるころには――。


「とうとう、ここまで追い詰めた。そ、そ! それでは――いただきます!」


「あ! ずるい!」


「みなのもの! 抜け駆けをしようとしたこやつをおさえろお!」


「「「「「「「「「「は~~~~~い」」」」」」」」」」」


 なんということだろうか。女子どもは孝明をめぐって争いだした。


(こ、これは――チャンス!?)


 孝明はこの気を逃さんと誰にも気づかれないように――こっそりと、とかそんな気は回せず、慌てて部屋に入っていった。


 外からはかすかに「あっ! いない! 逃げられた! あなたたちのせいよ!」と責任のなすりつけのような言い争いが聞こえる。


 安堵した――。今までの緊張が一気にとれる。ただ、息は荒い。肺がぜーぜーいう。そして――。


「あら、ずいぶんと外を騒がせていたようですね。朝からけっこうなこと」


「はぁ、はぁ、はぁ――お、おはよう――」


「孝明、おはよう。わたしのこの、覚えて、いるよね?」


「あ、あたりまえだろ? 桃缶」


「も、ももかんいうな! ばか、あほぉお!」


 桃が子犬みたいに吠えてくる。


 最初、あの時再会した時はもっと大人びてみえた桃は昔とあんまり変わっていなくてよかったと孝明は思う。


(……う、うん。もうちょっとわかっていてほしかった、かも……身体的に)


金持ちランキングに続き、ある意味幸せになるランキングまで一位になってしまった孝明。

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