5、
翌日――。
「だ、誰も、いない、よね?」
孝明はいつも通りの時間に登校中。昨日のあの出来事を栄に登校することさえ、ままならないと思っていたが以外にもいけるか?
「ねえねえ、あの人……」
「うん。ちょっと、やばいかも……」
「……」
孝明の不自然な動きは逆に目立ち、他校の生徒や通勤中のサラリーマンの人たちに怪訝の眼差しがくる。それでも、今の孝明にとって一番大切なのは周りからの評判ではなく、今、この時をどう生きるかということであるのだ。しかし、逆を言うならば孝明のその不自然な動きは全く関係ない人たちだけでなく、孝明のよく知る制服の人たちにもめだつわけで。
「あ! 森孝明発見! みんなああ!」
そして、その掛け声と同時に――。
「わたしがいただきま~す!」
「わたしのセリフだ!」
「いいえ! わたしよ!」
「ちょ、ちょちょちょ――」
ちょっと待ったあ! なんて言ってはいられない。孝明の足は自然とレッツダァアアシュ! をしていた。目的地はもちろん学校。戦火の真ん中。
(や、やばい! 思わず学校にきてしまったけど――ぜ、絶対選択肢間違った)
しかし、時すでに遅し。そして、孝明が生き残る手段は二つ。
――一つ目はあの教室に退避。きっと、桃や梨花もいるはずだ。
――二つ目は授業のチャイムがなるまで逃げ続ける。
まあ、二つ目は無理だと思う。
ということで孝明は……。
「よしっ。なんとかあそこまでは生き延びなければ!」
あの、ゴットハウスに向かうことにした。
「よ、よし……ここには人がいな――」
前方二十m、あのランキング掲示板の前に推定一〇〇人の人だかり。
(おいおいおい! まじですか!?)
これでは教室に行った方がまだましだ。
「いたぁあ!」
と思ったが撤回。今すぐゴットハウスに向かわないと命はないだろう。
そう、決心を決めたときだった。
「森孝明の順位は―――――――――第――!」
(うそ、だろ……)
ランキング掲示板には森孝明の名前。そして、全校アナウンスなみの大音量で呼ばれる森孝明の名前。まさかの二日連続で名前を呼ばれているのはあの金持ちランキング一位の森孝明。
「また俺かよ!」
つい、叫んでしまったのが大失敗。孝明は一斉に注目を浴びる。
「や、やばっ」
だが、みな孝明の顔を見るや、掲示板の方に顔を戻す。その隙にこっそり、人混みにまぎれ、身を隠しながら前進。そして――
「――――二〇〇二位――まさかの――最下位ぃい!」
「……は?」
まさかの最下位になってしまった孝明の決断は――!?