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1、

 ここ、藤森学園高校は一年から三年まで総計千二百人をかかえるマンモス校であり、ハチャメチャ学校である。ちなみに中等部は八百人。

 

 そして、いつものように校内を放浪としていると――あのばかでかい電子掲示板が目に入る。


 別の名で呼び換えるなら――ランキング掲示板。毎回、休み時間になるたびに誰かの○○ランキングが発表されていく。それは完全にランダム式。一位から二千位くらいまで。さらにどんなランキングなのか、いろいろある。


 簡単に言うと、見るまでわからない。孝明が知っているのはこのくらいだ。まあ、これは入学式の時に言われたことだ。


「森孝明の順位はああ! ――第!」


(ん? ちょうど俺の名前が挙がっているな。まあ、見る限りでは俺の名前が挙がっても誰も関心を持ってくれないな.。ま、当たり前だけど)


 そんなことを思っていてもちょっとは気になってしまうお年頃。孝明もこっそり、人混みの中に紛れ込む。


 それにしても今日は人が多い。特に女子。さらに言えばこのオーラ。普通ならこんな誰だかわからな

い孝明の名前を凝視する必要がない。


 少々気になったので電子掲示板のランキングタイトルを見てみることにした。しかし、掲示板を見る

より先に孝明の順位が挙げられた。


「―――――――――――――――――――――――いちいいい!」


 と、同時におなじみのあのやったーコール。


「え? え? 一位? や、やった! で、なんの順位だ?」


 今度そこ、孝明は電子掲示板の片隅に目をやった。


(将来金持になるランキング!? なんだ、これ! 俺にもとうとう春の風が!?)


 と、思っているのもつかの間。


「ねえ、今、あの人やったああって言っていたよね?」


「うんうん。言っていた」


「じゃああの人が森孝明?」


「絶対そうだよ!」


「でも全然普通の男の子に見えない?」


「いいや。よく見てあの目つき」


「え? あ、なんとなくわかる」


 そして、女どもは声を合わせ――



「「「「いやらしい」」」」



 なにこれ。どういうこと? なんでこんなに注目を浴びちゃってるの? と孝明は思う。


 一瞬のざわめきは一気に全土に広がっていく。そして、それが合図かのように


「わ、わたしがいただきまあす!」


「あっ! ずるい!」


「わたしも!」


「わたしも!」


「わたしも!」


「ああっ!」


「えええい! あれはわたしのだああ!」


「え、ええ!? ちょ、ちょっと待っ――!」


 これ、って……もしかして女子に襲われている真最中!? 


 まてまてまてまて!


 だが、女子たちは全く待ってくれる素振りを見せない。孝明の体は自然と回れ右。さあ、レッツダア

アアアアアシュッ! をしていた。


「はぁ、はぁ、……くそ、くそ! なにが金持ちだよ! これじゃあそんなのになる前に死んでしまう

じゃねえか!」


 そうは言いつつも、実際に殺されることは……ないだろう。たぶん。


 気づくと孝明の体は汗でびっしょりだ。肺もぜーぜーうなっているのがわかる。第一、孝明は文科系

でもなければ体育会系でもない。ごくふつーの男子高校生なのだ。だから、こんな仕打ちは辛すぎる。


「見つけた!」


「まじかよ! まだ追って来るの!?」


 と、その時


「こっち、早く!」


「だ、だれだ」


「そんなのいいから! まだ死にたくないでしょ?」


「お、おう」


 誰との声もわからず孝明はその声の主の手招きで、ある薄暗い教室に急ぎ隠れた。




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