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とあるモンスター愛護団体の話

ご協力お願いしまーす。ご協力お願いしまーす。良かったら、読んでいただくだけで構いませんので。ご協力…あ、ありがとうございます!これ、私たち「モンスター愛護団体」の活動内容を少しでも多くの人に知ってもらおうと思って配ってる、チラシなんですよ!私たちはかけがえのない命が少しでも守られるように、こうやって活動をしているんです。


そうです、私たちはモンスターの命を守るため、モンスターを保護するために活動をしています。お兄さんも、モンスターを見たことくらいはあるでしょ?スライムとか。お兄さん、きっと「モンスターは悪いやつで、凄く危険な奴らだから全部駆除した方がいい」って思っていませんか?けれどそれは間違いなんです。モンスターが悪いんじゃありません。私たち人間の方が悪いんですよ。

こんなこと言われても最初はぴんと来ないかもしれません。けれど考えてみてください。人間からしてみれば「勝手にモンスターが人間界に住みついた。だからモンスターが悪い」という感じかもしれません。けれどモンスターの気持ちになって考えてみてください。暗い魔界から、明るくて綺麗な人間界へ引っ越してきた。ここでこれからのびのび生きていこうと思ったら、いきなりそこに人間がやってきて、自分たちを攻撃してくる。そりゃ混乱もするし、恐怖だって感じるだろうし、人間を襲うのだって当たり前ですよ。


確かに、モンスターと私たちは違います。モンスターは人間と生態がかなり違います。人間以上に賢いものもいますが、そうでないものも多い。だからこそ、モンスター側から人間に対して有効なアプローチがとれないのは当然のことなんです。お兄さん、野良犬が人間にいきなりなつくと思いますか?なつかないでしょう。むしろ噛みついたり、ひっかいたりしてくるでしょう。じゃあどうすれば良いと思いますか?


それは、人間の方から友好的なアプローチをすることです。野良犬と仲良くなるにはどうすればいいか、というのと同じことです。最初は攻撃されるかもしれません。けれど、そこでこちらも攻撃で返せばいつまでたっても仲良くなれません。いずれこちらの友好的な態度が相手に伝われば、モンスターだってきっと友好的な態度をとってくれるはずです。けれど私たちは今までどうだったでしょう?今ではモンスターが人間を襲う気配がなくても、こちらから積極的にモンスターを傷つけているのではありませんか?モンスターたちはまだ何もしていない、ただそこにいるだけなのに。


酷いのはですね、勇者ですよ。勇者、なんて呼ばれていますが、中身は残酷な虐殺者ですよ。勇者というのはモンスターが襲ってくる前に、経験値を得るためにモンスターを殺すのですから。あるいは、お金を稼ぐために罪のないモンスターたちをバッサバッサと殺していくのです。可哀想な話じゃありませんか!モンスターだから仕方がない、なんて思うのは人間の高慢さです。モンスターだってかけがえのない命。根本的な部分は私たち人間と同じはずです。だってそうでしょう?モンスターだって生きているんですから。それなのに、簡単に殺してしまって、命を奪ってしまって良いのですか?


確かに、確かにね。モンスターは人間を襲いますよ。でも、モンスターだってそのほとんどは穏やかな性質を持っているのではないでしょうか?人間が勝手に「モンスターは皆凶暴だ」と思っているだけではないでしょうか。もしかしたら、モンスターが私たち人間を襲ってくるのは、モンスターから敵だと思われるようなことを私たちがしてしまったのではないでしょうか。だからモンスターたちが襲ってくるんです。その結果人間がモンスターに襲われて、殺されてしまっても自業自得だと言えます。原因を作ったのは私たち人間の方なのですから。

多くの人は、勇者がモンスターを倒すことを良いこと、最善の策だと思っています。けれど、どうして人間も、モンスターも傷つかない方法を選べないのでしょう?モンスターだって同じ命のあるもの、人間が誠心誠意友好的な態度をとって、今まで行った残虐行為を謝罪するべきです。そうすれば、モンスターだって心を開いてくれるでしょう。


そもそも、モンスターが人間をちょっと傷つけたくらいで、そのモンスターだけではなく周りのモンスターまで駆除してしまうのはおかしいのではないでしょうか?人間だって、危険な奴なんていくらでもいます。しかも人を一人殺したくらいではこの国では死刑になりません。たくさん殺したって、死刑になるのは罪を犯した本人だけです。周りの人間が一緒に死刑になることはありません。それなのに、モンスターの場合はどうでしょう。一匹が人間に危害を加えれば、討伐隊が組まれて駆除される。勇者が偽善面で駆除に行く。おかしいことではありませんか。何故人間だけ特別扱いなのでしょう?これはまさしく人間のエゴでしかないのです。

こちらに危害を加えるモンスターがいたとしても、すぐに殺してしまうのは間違いです。まずは魔法で眠らせたり、麻酔などを使って無力化させ、人里離れたところに送ってあげるべきだと私は思います。確かにそのためには人命を危険にさらす必要はありますが、だからなんだと言うのでしょう?私たちは今まで流してきたモンスターの血に対して、せめて人間の血で償わないといけません。


それに、人間が最近増え過ぎたのも悪いのです。そのせいでモンスターの食べる物がなくなってきて、仕方なく人間を襲っている面もあるのではないでしょうか。だからモンスターのために私たち人間が食料を提供してあげれば、襲ってくるモンスターはぐっと減るのではないでしょうか。そりゃまあ、飢餓に陥ってる村もありますけどね。でもモンスターの保護の方が優先されるべきじゃないですか。ね、お兄さん。人の心があるならば、お兄さんだってわかるでしょう?

だから私たちはモンスターの中でも可愛らしい見た目のモンスターを積極的に保護していくために活動をしています。見た目が醜いものはちょっと…と思いますが、可愛らしいモンスターなら殺してしまうのは可哀想じゃないですか!なのにバサバサと殺すことができる勇者は本当に人の心がない、冷たいやつなんですよ。…そんなことないって?お兄さん、甘い。甘過ぎる。お兄さんは勇者を知らないからそんなことを言えるんです。まぁ私も勇者には会ったことがないんですけど…でもきっと冷たい奴なんですよ。可愛い可愛いモスターでも躊躇せず殺せるんですからね!


あ、お兄さん。今週私たちの団体、この村で講演会をするんですよ。何でも今勇者がこの村に滞在しているそうで、私たちは勇者が立ち去る前に講演会をしたいと思ってるんです。勇者に対する宣戦布告ってやつです。このチラシにも詳しい日時のことが書いてあるんですけど、もしよかったら是非、是非講演を聞きに来てください。私たちの活動のことがもっとよくわかりますし、興味があったら、是非!

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