女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・8
笑顔で部屋から出てきた女神二人と人間一人に、ザーフはおとなしくお茶を出す。
「で、あの、どういった話を? あ、いえ。話の内容というよりも、お義母さんにお伺いしたいことが」
「おや、なにかの、婿殿」
「レオナが妊娠したとして、その、彼女の体に負担になりませんか?」
ザーフが心配しているのはそのことだけだ。もし本当にレオナとの間に子供が出来ていたら、それはとても嬉しい。嬉しいが、彼女の存在に負担をかけることにならないのか。
真剣な表情のザーフに、義母神エニフィーユは口元を覆って楽しそうな声を洩らした。
「ほほほ、わらわの娘はほんに幸せですこと」
何故にそんなに嬉しそうなのですか、お義母さん。ザーフは困惑し、ヘレンに視線を向けた。
仲間は、素敵な笑顔で親指を立てた。
意味が分からない。
嫁を見ると、なんだか頬を染めてはにかんでいる。
「……あー、俺、心配しすぎですか?」
「いやいやそんなことはないぞー。ねぇ、エニフィーユ様」
「ええ。そのようなことはありませんよ、婿殿」
女性陣、動揺するザーフを前に、えらく楽しそうである。
「……レオナ?」
「はい、あなた」
「……体、なんともないのか?」
「ええ。今のところは。もう少ししたら、つわりとかそういうものも出るかもしれませんけれど、わたし、人間ではないから出ないかもしれません」
と、彼女が言うということは、妊娠は確定か。では、まず、やらなくてはいかんことがある。
「レオナ」
彼女の手を握り、ザーフは真正面から向き直る。
「元気な子を産んでくれ。頼む」
「……はい、ザーフ」
「……いろいろと見習わせたいものですわね」
「は。主神ゼオはああいうことは言わないですか」
「言いません。婿殿の爪の垢でも飲ませたいものですわ……ほほほ」
「……ご苦労をなさったのですね、エニフィーユ様……」
脇でなにかいろいろと呟いている義母神と、仲間の会話も、新婚夫婦には聞こえていなかった。
新婚夫婦最強(遠い目で言ってみる・笑)