女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・6
最近、レオナがすっぱいものを食べたがる。
嫁が欲しがるので、ザーフはこっそり村の外で酸味の強い果物を栽培していた。
季節はずれの上、この村の気候では生えない果物なので、こっそり栽培するしかないのである。
レオナが畑に立つだけで、作物はにょっきり元気に実るのだ。さすが実りの女神の欠片。
ザーフは畑を耕し、種をまき、水をやり、雑草を抜き、嫁のために頑張った。
いつものように、仲間が遊びに来た。男前魔法使いへレンだ。
いつものようにたわいもない世間話をして、あはははと笑ったときだった。
唐突に、ヘレンが言ったのだ。
「レオナ様……妊娠しているのでは?」
がちょん。ザーフは茶のカップを落とした。そのまま、隣のレオナを見る。
確かに最近すっぱいものを食べたがり、気分が良くないということも、まま、あった。
女神の欠片なので、体調不良も存在自体が安定していないせいなのかと不安で、実りの女神ディオレナの神官・仲間のエッセに相談したこともあった。
「まぁ……どうして?」
「いえ、少し顔の線がふっくらとしたなと思いまして」
ヘレンの指摘にレオナは頬を赤らめ、ザーフを見て、それからヘレンを隣室に招いた。
女同士でなにやら話していたようだ。
ザーフは硬直からようやく回復し、こぼした茶を拭いた。
レオナが?
妊娠……?
ってことは、俺の子。
俺、父親?
頭の中を、なんだかわけの分からない単語が駆け回る。
いやいやいや、嬉しいぞ。すごくすごく嬉しい。
が、いいのか?
ただでさえ不安定な女神の欠片のレオナが、子供なんて産めるのか?
彼女の体に負荷はかからないのか!?
そわそわ。
レオナとヘレンの話が終わるまで、ザーフは飢えたクマの様にうろうろと居間を歩き回った。
もしかしてもしかして??