女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・5.5
ちょっと昔に仲間同士でした会話。
「思ったんだが」
魔法使いヘレンが、真顔で神官エッセに話しかけた。
「なんだ? レオナ様のことか?」
エッセが信仰する、実りの女神ディオレナの欠片が顕現したのは、数ヶ月前。いろいろな事情が重なって、彼女を保護し、一緒に過ごす機会を得た。その中で、彼らのリーダー格であるザーフと、女神の欠片であるレオナが恋仲になったのは、驚きだったが、微笑ましく嬉しいことだった。
「神の欠片との間にでも子供は出来るのだろうか」
ヘレンは真顔だ。冗談ではなく、真剣に言っている。こういう冗談をいう女性でもない。
「……神話では、出来る、という逸話はあるけれど……」
返答に困ってエッセは神話に逃げた。
「と、いうことはだ。ザーフとレオナ様の間に子供が出来る可能性もあると」
「…………ないとは言えないなぁ」
「その場合だな、子供は人間か? 神か?」
「…………さ、さぁ……」
答えづらい。こんな質問に答えられるのは神だけではなかろうか。
「神話では出来るのだな? では、可能性もあるということか?」
「う、うーん……どうだろう……分からないよ」
エッセは、回答することを放り投げた。
数ヵ月後。
「そういうわけで、私の知的好奇心を満たすためにガンバって子供を作ってくれ」
「は!? な、なんだいきなり!?」
ちょっとこぼれ話。