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女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・5

 実りの女神とカケオチしたのはいいけれども、女神の身内の神様に押しかけられた冒険者ザーフは、硬直から逃れられずにいた。

 ……目の前で、父神と、嫁の弟神が、母神に叱られているのだ。

 かれこれ一時間になる。もっとも、神々からしてみれば一時間などたいした時間でもないのだろう。

 母神エニフィーユに叱られている父神ゼオと、弟神エクトは、当初から顔を上げられないようだけれども。

「……レオナ、いいのか、あれ。放っておいて」

「良いでしょ。お父様もエクトも、文句を言いに来ただけのようですから」

 旦那を苛められた嫁神、実りの女神・ディオレナの欠片、レオナは頬を膨らませている。

 

 母神の説教は、まず父神ゼオに向けられた。

 娘神を追うために欠片を顕現させるとは何事か。

 神の役目を放棄して、地上で人間にちょっかいをかけるとは何を考えているのだ。

 まして、娘を愛し、護る為に懸命な婿を苛めるとはなんのつもりだ。

 そうして、弟神エクトも叱られている。

 姉の幸せを祝えないとは何事だ。

 婿が人間だからとて、いたずらに脅かすような真似をするとは何を考えているのだ。

 まして、姉が幸せにしているというのに、弟のお前が姉を不幸にするような行動を起こすとは何のつもりだ。


 ……母神は娘と娘婿の味方のようである。今まで舅と小舅に苛められていたので、ありがたすぎて涙が出そうなザーフだ。


「いやしかしだな」

 一時間経過してようやくゼオが反論しようとしたのだが、途端、空で稲光が輝いた。

 屋根を貫いて、雷光がゼオに直撃する。

「反論は許しませぬ。いかにここに居られるのが欠片とはいえ、主神としての自覚をお持ちになってくださいな、あなた」

 無言になった(動かない)ゼオの襟首を持ち上げて、エニフィーユはにこやかにザーフに微笑みかける。さすが母神、威厳ある美人だ。

「娘の欠片をよろしく頼みますわね。くれぐれも、ぞんざいに扱わぬよう。よろしくて?」

「はい!!」

 放電している彼女から視線を逸らさず、ザーフは即答した。そうしなければゼオのような目に遭うと直感している。姑、ある意味で舅より怖い。

「良いお返事ですこと。その言葉、信じるぞよ、婿殿」

 ほほほ、と、上品に笑い、エニフィーユはゼオを引きずりながら、もう片手でエクトの襟首も掴んだ。

「さ、天界に戻るのじゃ」

「し、しかし母上、姉上の欠片を」

「この子は地上で過ごすことを選んだのじゃぞ。いずれ婿殿の天命が終われば天界に戻るじゃろう」

「…………天命……」

 ものすごい目で睨まれた。この場で天命を終わらてやるくらいの勢いで。

 

 途端、雷光直撃。お姑様、容赦なし。

「ディオレナが泣く様なことはお止し。弟として姉の幸せくらい祝えぬでどうする」

「お母さま、ありがとう……レオナは幸せ者ですわ」

「ほほ、母も娘の幸せを祈っておるぞ。婿殿、よろしゅうに」

「は、全身全霊でレオナのことは護ります!!」

 レオナの肩に手をかけて、ザーフは断言した。お姑さんは華やかに微笑み、夫と息子を引きずり外に出て、雷鳴と雷光と共に、空に消えた。

 事故で顕現してしまったレオナと違い、自力で天界に戻れるようだ。

「おー、すごい、さすが姑さん。自力で還れないレオナ様とは大違いじゃのー」

 能天気に言い切るレコダにゲンコツを落として黙らせ、ザーフは隣のレオナに視線をやる。

「……戻れるチャンスだったかもしれないけど、良かったのか?」

 勢いに押されて見送ってしまったけれど、レオナが天界に戻って本体と合体するチャンスだったのかもしれない。

「まぁ。ザーフはわたしが戻ったほうが良かったのですか?」

「良くない」

 即答。

「いてくれ。俺の、天命が終わるまで」

「はい」

 レオナは満開の花のような笑顔で頷いてくれた。


姑さん最強伝説。そして、新婚夫婦はイチャイチャするがよいさ!(おい)

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