女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・4
舅と小舅は、ザーフの話を聞いてくれそうにない。
嫁はこちらの味方をしてくれているが、舅と小舅が聞く耳を持っていないので、数の上で不利である。
困った。それでもあきらめるわけにはいかない。
「あのですね、ゼオ様、エクト様」
「貴様は喋るな」
問答無用である。話を聞くどころか、顔も見たくないと言いたげだ。このままではレオナも連れて行かれかねない。ザーフは歯を食いしばって顔を上げた。ふんばりどころだ。なんとしても認めてもらわなくては。
「俺は、本当にレオナを愛して」
「それ以上喋ると、貴様の周辺から夜をなくしてやる」
エクトに遮られた。
「眠れないぞ。安息の夜が消えるのだからな」
「エクト!」
さすがにレオナが声を上げた。
そのときである。
「こんちにはー。ザーフ、レオナ様ー、いるかのう?」
明るい声が玄関口から響き、ドアが開いた。返事も待たずに入ってきたのは、仲間である少年盗賊レコダだ。
「あ、ふたりともいた。おっほっほぅ、舅と小舅もこっちだったですかい。やっぱりのう」
少年のクセにジジイくさい喋り方をする彼の後ろに、人影がある。
「お迎えですぞう。お二方」
にやにやと楽しそうに笑うレコダの後ろで、にんまりと微笑んでいる、美女。
魔法を唱えているわけでもないのに、体からわずかに放電している。
あれはまさかもしかして。
「ほほほ、さがしたぞえ、あなた。子供たち」
「お母様!?」
「お前!?」
「母上!?」
三神三様の声が揃った。
察するに、この美女、父神ゼオの妻、母神エニフィーユではなかろうか。
雷鳴の神でもあるエニフィーユなので、欠片がちょっと放電していてもおかしくない。
舅、小舅の次に、姑が来た……。
どうしたらいいんだ、俺。
ザーフは絶望を覚えた。
姑降臨! こ、怖い(笑)