女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・3
聞いたところによると、顕現したのは、主神ゼオと夜の神エクト。
よりにもよって主神の欠片が顕現したことで、都は大騒ぎになっているらしい。
主神ゼオは父神とも呼ばれ、全ての神々の父である。
夜の神エクトは、実りの女神ディオレナの弟神だ。
うわー、そりゃあ大変だー、と、ヘレンの話を苦笑しながら聞いて、数日。
……目の前に、不穏に笑っている主神の欠片と、こちらを睨みつけている夜の神の欠片がいた。
なにがどうした。
舅と小舅(の欠片)が目の前にいる。ザーフは居心地の悪さを感じていた。特に、エクト神の欠片が彼を睨みつけてきているのは気のせいではあるまい。
「……こいつが……」
ぼそっと、エクト神が呟く。敵意満載だ。つい、反射的に心の中でザーフはおのれの剣を捜してしまう。
主神ゼオは何も言わない。何も言わずに、ザーフを見ている。
「……お父様、エクト、何をしにわざわざ天界よりいらしたの?」
見かねたレオナが口を開く。
「何を? 何をと申したか、娘よ」
ようやく、重々しく、父神は声を出した。
「ここにいるそなたは神の欠片とはいえ、この父に断りもなく人間と婚姻を交わすとは何事か」
……。
…………そういうことですか。
ザーフは内心で重圧を感じている。
これはあれか。あれだな。
『娘さんを僕にください』ってのをやれということだな?
「あの」
「貴様は黙っておれ」
貴様ときたか。エクト神は歯軋りしながらザーフを睨んでいる。これもあれか。
おねーちゃんを取りやがってこの野郎ってことか。
シスコン神め。
しかし、神の欠片の威光がザーフに言葉を発することを許さない。
カケオチ先が親や身内にばれた夫婦。ただし、親は神様で嫁も神様。
ちっぽけな人間は、それでもなんとか抵抗しようともがく。
「いや、俺は」
「黙れと言ったぞ人間」
父神、容赦なし。ザーフは見えない力によってテーブルに押し付けられた。
ぎりぎり。痛い。
「お父様!」
レオナがザーフの背に手を当てる。途端にふっと楽になった。
「姉上! そのような人間をかばうことはありませぬ! どうせ、何も知らぬ姉上を巧い言葉でたぶらかしたのだ!!」
エクト神がザーフを更に睨み付けた。レオナの守護があるせいか、今度は何も感じない。
「そんなことはない! 俺はレオナを」
「黙れ」
全く聞いてもらえない。どうしたらいいのか
カケオチ先がバレマシタ。舅と小舅に見つかってドッキドキ。