女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・2
小さな村に落ち着いて、数ヶ月。すっかり若夫婦ということで村になじんだ元冒険者ザーフと、女神の欠片であるレオナ。
二人っきりで、幸せ新婚生活を満喫していた。
時々、村の近くにゴブリンが出たら、こっそりザーフが退治しに行ったり、畑に害虫が湧きそうになったら、こっそり夜中にレオナが畑に立つだけで追い払ったり……まぁ、おおむね平穏にやっていた。
そんなある日、男前女魔法使いヘレンが、二人を訪ねてやってきた。
幸せそうに農業をやっている二人を見て、安心したようだった。
「元気でやっているようだな」
「ああ、おかげさまで」
この仲間たちが上手くやってくれたおかげで、今の生活がある。落ち着いたら真っ先に仲間たちに連絡したザーフだ。
「お前たちのほうはどうなんだ? 特に、エッセ。レオナのこと誤魔化すのは大変だっただろう?」
何せザーフは頭を使うのが苦手だ。冒険者をやっていたときも、作戦などは全て仲間たちに任せていた。レオナの件に関しても、悩みに悩んで頭から煙を吹きそうになるまで考えたが、結局見かねた仲間たちが代わりに考えてくれた。
「ああ、それは大丈夫だ。レオナ様は腐れ果てた神殿に愛想をつかして天に還ったことになっている」
「えええ!? わたし神殿ではそういうことになっているのですか!?」
レオナが目を丸くした。
「ええ。まぁ。大丈夫ですよ。それで腐敗していた神官たちも心根を入れ替えて一から修行しておりますから」
しれっと言うヘレンである。ザーフは苦笑い。多分、エッセが腐敗していた神官をいろんな意味で蹴落としたのだ。神殿の内情に憂いを覚えていた真面目な彼だから、この機会に徹底的に神殿内の浄化を試みたのだろう。
「揉めなかったか?」
「揉めたさ。が、収めた。ふふふ、楽しかったぞぉ~?」
ヘレンの笑顔が、ちょっと怖い。多分、相当いろいろなことをやったのだろう。
「すみません。ご迷惑をおかけしました……」
レオナが頭を下げる。女神の欠片に頭を下げられた魔法使いは、豪快に笑った。
「なに、気にしないで下さい。我々が楽しくてやっているのですから」
本当に言葉通りに楽しんでいるのだ。ザーフは仲間の性格をよく理解している。
苦笑いしながら、お茶のおかわりを注いだ。
「それで、様子を見に来ただけか?」
「ああ、そうだ。ちょっと面白いことが起きているのでね。レオナ様に何事もないかと少し心配でな」
「? 面白いこと?」
「そうとも」
にやりと笑い、ヘレンは言う。
「ここ一月に、神の化身が二人顕現したのさ」
「はぁ!?」
面白いだろう? とニヤニヤしているヘレンに、若夫婦は唖然とした。
ぽこぽこ顕現するような存在じゃあないはずの神様(笑)