女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・1
思いつきから連作短編に昇格したお話です。 何の変哲もないファンタジーの世界。
何の変哲もない小さな村。
農業とかが盛んなだけの小さな村に、最近変わった夫婦が住み着いた。
旦那さんはもと冒険者なのか、結構たくましい。
奥さんは荒事には向いてなさそうなおとなしそうな女性。
ところがどっこい、奥さん実は女神でした。
冒険者だった旦那。ひょんなことから顕現した、女神の化身に惚れちゃった。
女神の方もまんざらではない様子だったので、幾度か冒険を重ねるうちに、親密に。
神殿は女神の化身を保護したい。
しかし、保護されてしまったら、相手と会うのは至難になる。
よっしゃカケオチしてみっか!
……という話を妄想した連作短編。
旦那、結構高レベル。
奥さん女神。最初に決めたのはそのくらいです。
「本気ですか」
彼女は困った表情で言う。
「本気じゃないなら言わないよ」
男も困った顔で言う。
「女神とカケオチしようなんて」
実りの女神のディオレナの分体が顕現した。
なにがどうしてこうなったのか。
本体と同一の存在でありながら、違う存在。
存在するだけで実りをもたらす彼女は、便宜上の名をレオナと名付けられた。
それから、彼女を狙う連中から、彼女を守っていた冒険者のグループの一人、剣士ザーフ。
幾度か危険を潜り抜け、彼女を守っているうちに、彼と彼女の間に芽生えたものがある。
「神殿に入ってしまったら、レオナは最高位の存在で、そうそう会えなくなるだろ?」
「それはそうですけれど……」
「というか、神殿の連中、どう見ても俺とレオナを離そうとしているからなぁ。多分、会えなくなる」
「……」
「それでもいいのか? 俺はいやだ」
押し黙る女神の化身にザーフは真剣に言う。
「だから、一緒に来てくれ」
「でも……」
女神のカケラは、信者を見捨てるような行為ができないと、困っている。
「大丈夫ですよー、レオナ様」
冒険者仲間の神官、エッセがにこやかに笑う。彼は実りの女神・ディオレナの信者だ。
「どこにいたって、あなた様は女神です。どこにいても、それだけは変わりません。ここにいる信者を見捨てるのではなく、あなたを利用しようとする者から逃れるだけなのです」
ニコニコと笑いながら、エッセはザーフの肩を叩く。
「任せるのがこいつというのが業腹でございますが、他の連中よりは信用できますし」
なによりも、女神が彼を求めている。
信じる神が、人間を愛したというのなら、信者として応援するしかないだろう。
「ザーフ、男を見せろよ? レオナ様を護り通せ」
冒険者仲間の女魔法使い、豪快なヘレンが親指を立てる。
「任しとけ。後を頼めるか?」
「任しとけ! ゴタゴタさせるのは大得意じゃ!」
楽しそうな少年盗賊、トラブルメーカーのレコダが笑う。
頼もしい仲間たちに笑いかけ、ザーフは手を差し伸べた。
「さ、レオナ」
行こう。
何もかもを捨てるのではなく、新しい何かのために。
ぷちOP。これからちょこちょこ続きます。