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第二話 裏

この中学3年間は、あたしにとって、とても充実していた。明菜と友情を育み、毎日、全てが新鮮そのものだった。


これが思い出というものか…。

ずっと、明菜と一緒に

ずっと友達でいたい…。


部屋の窓から、空を仰いで、輝く夜空に祈るようにー。



春が待ち遠しい、みんな高校の進学も決まって浮き足立っている。


明菜は高専に決まっていた。理由は


「え?ラクそうだから」


あっけらかんと答えた。


あたしも明菜と一緒の学校に行きたかったが


「優の進路だろ?あたしに無理に合わせんな」


冷たい言い方をされたが、明菜なりの優しさだと思った。


言い放って、うつむいた明菜は少し寂しそうだと悟った。


『明菜…と学校違っても会えるもんね…いつでも』


「…たりめーだ。優が呼べよな」


まるでカップルみたいなやり取りに再び、あたしは




『ぶふーっ』


と場違いな吹き出し笑いをしてしまい


「…何笑ってんだ」

と明らかに、明菜は眉間にシワを寄せ


「てめーその失礼な笑い上戸やめろ」

と呆れたように言った。


この合間にも、あたしは笑っていて、すぐ口元が緩んでしまっていた。


『だって‥カップルみたいなやり取りなんだもん‥あははっ』


「じゃあ付き合うか?」

明菜のハスキーボイスに


あたしはピタリと動きが止まった。


(えっ!?)




「馬鹿!嘘だよ。つーか何顔赤くしてんだー!」


明菜は驚いてギョッとした顔をしたが、すぐ元通りの綺麗な顔になって


「あいにく、女に興味はねぇよ」

フンと笑った。


『ま‥間に受けてないもん』


「知るか」

と一瞬だけ動揺した優の心を見透かしたように明菜は鼻で笑った。



問題児気質で、目を付けられやすく、教師との対立もしばしば。

いつも学校で羨望と恨みと妬みと罵声を浴びせられた明菜。


日に日に綺麗さを増す明菜は

「うっせぇな!」

と何もかも遮断したかったんだろう、あたし以外の友達は作らなかった。


まわりに敵が多すぎて

いつも

誰かに狙われて、嫉妬を買い、羨望の目で人は集まり

そのトゲトゲしい性格さに、歪んだように人は明菜にストレスを与え続ける。


あの日、夕暮れの教室で泣いていたのも、クラス中から好奇心と同情する人の空気に縛られ続けた明菜。



廊下を歩けば、スラリと伸びた脚に視線は集まり

165センチの顔も小さく華奢な体。栗色のストレートヘアがなびけば、男女振り返ってしまう。


休み時間


ジッと席に座っていると

次々に他人が取り囲んで

色々話しかけてくる。

だから休み時間は優を連れて体育館裏か屋上へ向かう。


明菜は中学3年になってから煙草を始めた。

「落ち着きたくてさ〜」

と煙草に火をつける時に

「‥やべ!ライターなくしたぁ」

と珍しくあたふたしてたから

『はい』とあたしは持っていたライターを出して、明菜の煙草に火をつけた。



「えっ‥何で優がライター持ってんの?」

と不思議そうに明菜はパッチリした目をまんまるにして聞いた。


『あたしも、喫煙者だからね』

と煙草を出し、口にくわえて火をつけた。


「ははっ‥大人しい面して喫煙者かよ」

と笑った。

『今時、普通じゃん?』と明菜に笑いかけると


「優って二重人格?何か裏の顔みたい」

しんみり、明菜はあたしの顔を見たから


『いい子を演じんのは疲れんの』

スーッと煙を吐いた。

「猫かぶってんの?」

『明菜以外にはね。面倒くさいから、いい子面してりゃ大半、乗り切れる。』


「疲れない?」

明菜もフーッと煙を吐いた。

『逃げてるからね。あたしはさ』


『‥ズルいよね』

ふっと笑って煙草を消した。

「優‥お前ってば最高だよ」


(えっ!?)


「お前は最高の友達だよ、手放せなくなりそうだ」

笑いかける明菜の瞳は真っすぐに澄んでいた。


お互いに、何か通じるモノが

存在してる気がした。

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