桐壺更衣の悲嘆
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ご寵愛を受けていることは、この上もない喜びです。
……ですけれど、破格の特別扱いは本当に止めていただきたいのです。
日々、寿命の縮む心地です。
一例ですが、わたくしは更衣という低い身分ながら殿舎を与えられました。
そこへ帝御自らが訪れてくださるという、高貴なご身分の女御さまにも勝る扱いを受けています。これで清涼殿(帝の住まい)に上る途中で汚物に出くわす等の、直接的な嫌がらせには遭わなくなりました。
満足しておられる帝には恐れ多くて申し上げられませんが、これは宮中との完全な断絶です。そう覚悟しました。
時折、こう思われてなりません。
主上が愛されているのは、わたくし自身などではなく、低い身分のわたくしを『愛している高貴な自分』ではないのか?
本当に心から愛してくださるのなら、どうしてわたくしの立場を振り返ってくださらないのかと。
なんと罪深い思いでしょう! 身の程もわきまえず、最も恐れ多いことです。
ですからきっと、わたくしは長くは生きられない。そんな予感がいたします。
老いた母と幼い若宮さま(更衣と帝の子・のちの光源氏)、そしてわたくしの愛する孤独な帝のことを思うと息苦しいくらいに辛いのですが……。