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我が家と異世界がつながり、獣耳幼女たちのお世話をすることになった件 【書籍化決定!】  作者: 木ノ花 
第二章

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第93話 ポシェットと古着

 素敵な出会いは続く。

 というより、素敵すぎる物をネットで取り寄せてしまった。


『きゃわあぁぁぁああああああああ――!』


 第三回目の炊き出しを終えて我が家へ戻ると、ちょうど置き配完了のメールが届く。そこで俺は注文した荷物を居間へ運び込み、中でも気になっていた品を取り出してみせた。すると、獣耳幼女たちが歓喜の叫びを響かせてくれた。


「かわいいっ、かわいい! すごい、サクタローさん!」


「わ、わあっ! なにこれっ! リリこれがいい!」


「んぅっ! ルルちゃんはこれ、これ! ふにゃあぁああ~!」


 エマ、リリ、ルルと。三人とも飛び跳ねて大喜びだ。尻尾もブンブンと音を立てる勢いで揺れている。おそらく、ここ最近で一番の興奮具合ではなかろうか。


 それぞれの手には、プレゼントしたポシェットがしっかりと握られていた。カラフルな色彩に彩られ、中央にはあるキャラクターが大きくあしらわれている。


 気になる正体が何かといえば……そう、うちの子たちが愛してやまないフェアリープリンセスだ。


 このアニメシリーズは数十年続いているだけあり、数多のキャラクターが登場する。今回はその中でも、うちの子たちが現在熱中しているプリンセスの製品をチョイスした。


 近ごろは常にシール手帳を持ち歩いているから、鞄でもあった方がいいなと思っていたのだ。何より、炊き出しのお手伝いを頑張ってくれている。クリスマスには少し早いけど、いい子たちにはちょっとしたご褒美をあげないとね。


「サクタローさん、ありがとっ!」


「どういたしまして。わ、ちょっと落ち着いて!」


 三人揃ってドタバタと居間を駆け回り、和室でひとしきり転げ回ってから、コタツでくつろぐ俺の元へ戻ってくる。最初に飛びついてきたのはエマだ。続いてリリとルルも懐へ潜り込んできて、ほとんど叫ぶようにお礼を言ってくれた。


「ほら、三人ともこれを見てごらん。このポシェットはね、こうやって使うんだよ」


『ほわあぁあぁぁああああ~!?』


 試しにエマのポシェットのチャックを開き、コタツの上にあったシール手帳を収納してみせれば、再び耳が痛くなるほどの大歓声が響く。ルルなんて、感情を持て余して俺の腕を甘噛みするほどだ。痛くしないでね?


 喜んでくれるとは思っていたけど、予想以上の反応だ。

 もちろんサリアさんとフィーナさんの分も買ってあり、二人ともニッコニコで試着している。便利で可愛いからと、すっかり気に入った様子。


 だけど、うーん……大人には、ちょっとデザインがキュートすぎる気もしないでもない。異世界ならともかく、日本でお出かけする際には別のポーチを用意した方がよさそうだ。大人っぽいレディースタイプを注文しておこう。


 その日の晩は、ポシェットを下げたままお風呂へ入ろうとする獣耳幼女たちの説得に苦労した。つけたまま寝たいとおねだりされたので、それはオーケーしたけども。


 そんなこんなで数日がすぎ。さほど間を空けず行われる第四回目の炊き出しには、うちのみんなはフェアリープリンセスのポシェットを下げて臨むことに。


 迎えた当日は、見知らぬ商人との顔合わせから始まった。

 廃聖堂前の広場はすでに大賑わい。澄んだ冬空のもと炊き出しの準備を進めていると、ゴルドさんに連れられて中年男性がやってきた。


「サクタロー殿、少しよろしいか。先にこちらの御仁を紹介させていただきたい。例の衣服の調達にご協力をいただいた、ラドニ商会の主である」


「ご紹介にあずかりました、サミール・ラドニと申します。この度はご用命いただき、誠にありがとうございます。三女神が紡ぎしこの出会いに感謝を」


 言って、胸に手を当てつつお辞儀する中年男性。

 サミール・ラドニを名乗るこの御仁は、くすんだ黄色の髪と髭を持つ四十代ほどの外見の男性だ。種族は、異世界でいうところの普通の人間である。


 柔らかなシワを刻む目尻が特徴的で、この街ではさほど珍しくない衣服をまとっている。商会の主という経歴にしては、いささか地味な装いに思えた。


「これはこれは、今回はご協力ありがとうございます。私は伊海朔太郎と申します。お気軽に、どうぞサクタローとお呼びください」


「承知しました。私のことも、どうぞサミールと。では早速ですが、ご注文いただいた品をご確認くださいませ」


 俺たちは広場の隅にとまる幌馬車の元へ移動し、たっぷり積まれた木箱の中に収まる品々を確認していく。


 サミールさんが持ち込んできたものは、炊き出しに集まった孤児たちに配布する用の『衣服』だ。もっとも、ボロキレ一歩手前の酷く傷んだものばかりだが。日本ならば迷わずリサイクル確定である。


 これらの手配をしてくれたのは、ゴルドさんとケネトさん。

 異世界の古着事情は厳しい。庶民にとって布製品はとても貴重で、何度も何度も修繕され、継ぎ接ぎだらけのボロキレになるまで使い潰されるのが常である。


 当然ながら、稼ぎの少ない者にまではなかなか回ってこない。しかし冬の寒さを凌ぎたい孤児たちにとっては、喉から手が出るほど欲しい品だ。


 そこでどうにか手配できないかと苦慮していた折に、サミールさんから申し出があったらしい。炊き出しの賑わいに商機を感じての動きだろう、とはゴルドさんの言である。


 理由は何であれ、子どもたちに服が届くならそれで構わないので、俺はすぐに承諾した。もちろん費用も負担した。


 とはいえ、大した金額でもない。元値が知れているうえに、まとめ買いということで便宜を図ってくれたらしく、日本から紅茶のティーバッグを数箱持ち込めば元は取れる計算だ……紅茶の需要が高すぎて感覚がバグりそうになる。


「それでは、品に間違いがなければこれで。私はお邪魔でしょうから、失礼させていただきます」


 ちょうど顔を出した小悪党スクワッドやカーティスさんたちにも手伝ってもらい、古着の入った木箱をすべて下ろす。その作業が済み次第、サミールさんは速やかに広場から去っていった。


 せっかくなので俺はラビットサンドを勧めたけど、他に用事があるからと断られてしまった。残念、またの機会だね。


 軽く一休みしたら、ホットプレートに火を入れて炊き出し本番だ。

 開始早々からラビットサンドを求める列は長く伸び、フィーナさん付きの侍女さん方から『孤児の数は前回を上回っております』なんて嬉しくも悲しい報告を受けた。


 今日も大人は銅貨六枚で販売。孤児は無料で食べ放題。人間の子には、下級の生命薬を薄めて飲ませることを徹底する。


 少し離れた場所で開始した古着の配布コーナーも大盛況。女神教のお手伝いの面々が張り切って対応してくれている。


 俺は調理番を担当し、手際よく肉を焼いていく。タレを絡めるタイミングと火加減は、もうすっかり体に馴染んでいる。


 出来立てのラビットサンドを次々と手渡していくと、受け取った子どもたちが目を丸くして、ぱっと輝くような笑みを浮かべる。こちらまで嬉しくなる瞬間である。


 いつも通り広場の雰囲気も明るく、まるでお祭り騒ぎ。

 というか、いつか本当のお祭りでも開けたらいいな。前の通りを屋台で埋め尽くし、子どもたちには金券をプレゼントするなんてどうだろう。


 想像するだけでも胸がワクワクする。

 いつか叶えたい夢として、頭の片隅にメモしておこう。

本作の書籍の予約が開始されました。詳しくは近況ノートをご確認くださいませ。

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― 新着の感想 ―
良かった・・ポシェット貰えなくて拗ねるサリアさんがいなくて本当に良かった。 (ちょっと期待したw)
ルルの一人称、ルルちゃんなンですナ。 予約時に表紙イラストの3人を見て、より期待が高まっております。...未就学児童じゃなく小学校低学年くらいに見えるけど
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