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我が家と異世界がつながり、獣耳幼女たちのお世話をすることになった件 【書籍化決定!】  作者: 木ノ花 
第二章

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第84話 炊き出しのメニュー相談

 小走りでいったん我が家へ戻り、大容量のボストンバッグを抱えて戻ってくる。中にはティーバッグなどをはじめ、リクエストや思いつきでチョイスした品が満載だ。


「もし興味を惹かれる品がありましたら、遠慮なく手に取ってご覧になってください」


 売り物をざっとテーブルへ並べると……ゴルドさんたちのみならず特使団の方々も強い興味を示し、競い合うようにご質問いただいた。今回も大儲け確実である。


 ドワーフ兄弟は、我が家の本棚の隅で埃を被っていた『この目でみたい世界の名建築』という写真集に猛烈な興味を示した。今度サグラダ・ファミリアの立体パズルでもプレゼントしようかな。


 カーティスさんはチョコ菓子をゲットし、微かに口元を緩めていた。侍女さん方は、ロールクッキーと紅茶のティーバッグを手に入れて大喜び。お気に入りみたいだから、また差し入れしますね。

 

 さほど時間をかけず、日本の品は完売する。

 代価は、金貨が数百枚。過去一番の大商いだ。結構な量を持ち込んだからな。


 ゴルドさんの精算は、約半分が後払い。追加でまた擬態薬や毛髪薬などをたくさん頼んだので、それと相殺だ。付き合いのある他の商会にも声をかけ、在庫をかき集めてくださっているのだとか。


 女神教の面々の支払いは、フィーナさん負担という形で内々に処理する。お世話になっているからね。ちょっとしたサービスだ。


 最後に、俺から相談が。改めて席を移動し、俺とサリアさんとフィーナさん、ゴルドさんとケネトさんの組み合わせでテーブルを囲む。獣耳幼女たちは、今は女神像の近くで縄跳びを楽しんでいる。


「実は、この聖堂の敷地内で炊き出しをやりたいと思っていまして。そのことで、少しお願いしたいことがあります」 


 切り出した話題は、前々から検討していた炊き出しについて。

 孤児たちに、せめて温かいごはんだけでも食べさせたい。そしてゴルドさんたちには、食材や器具の手配をお願いしたい。


 本当はとびっきり美味しい料理を振る舞いたいけど、日本の食材だと騒ぎが起きそうだからね。それに、筋から言っても地元で調達すべきだろう。


 この街の子どもがこぼす涙を、ほんの一匙でも減らせれば――そんなささやかな願いを胸に、俺は自分の希望を伝えた。


「活動そのものに異論はない。まことサクタロー殿らしいと深く感心しておる……だが、警備面については不安が拭えぬ」


 ゴルドさんとしては、警備体制の強化が必須と考えているようだ。

 さもありなん。俺は破落戸に襲われた経験があるほど不用心だし、異国の姫であるところのフィーナさんもやる気満々なのだ。


 しかし、ここで思わぬ助け舟が入る。

 失礼、と前置きをしつつカーティスさんが話に加わった。


「どうかご安心を。炊き出しの折には、我らも護衛に就きましょう。騎士の名誉に懸け、必ずや皆さまをお守りいたします」


 エルフの騎士殿が護衛につくならば問題なかろう、とゴルドさんとケネトさんも納得してくれた。これで、警備体制の強化に関してはクリア。

 

 続いてメニューの相談に入る。

 俺は当初、なんとなくのイメージでパンと簡単なスープを想定していた。が、すぐにケネトさんから待ったがかかる。


「孤児の多くは、そもそも食器の扱いに慣れておりません。中には、売れば金になると考える者もいるでしょう。導入するのであれば、十分に信頼が育ってからが賢明かと」


 俺はつい頷いてしまう。確かに、スープの食器を持ち逃げする子どもが出ないとも限らない。かといって、紙皿というのも問題だ。

 他にも、串を使うようなメニューは除外された。安全を考慮しての判断である。


「サクタロー殿。路上の孤児たちは、我々の尺度では測れぬほどに無知なのだ。それゆえ、可能な限り簡素な状態で提供するのが無難であろうな」


 ゴルドさんの指摘を受け、初めて会ったときのエマたちを思い出す……三人とも食器の使い方をあまり理解しておらず、熱々のハンバーグを手づかみでいこうとしたものな。

 

 義務教育など皆無。孤児の大多数は、文字すら読めないのが現状だ。にもかかわらず、俺はまた無自覚に日本の常識を当てはめようとしていた。自分で適当に判断しなくて本当によかった。


「となれば、黒パンも避けたほうがよいでしょう。アレは、スープなどでふやかして食べるのが一般的ですからな」


 ケネトさんが言うには、黒パンは固くてそのまま食べるには向かないそうだ。

 こうなってくると、根本からメニューを考え直す必要がある。見通しが甘すぎた……と、俺が眉間にシワ寄せたそのとき。


「この無双の餓狼に秘策アリ――ここは、バーガーしかあるまい! マヨネーズたっぷりのテリヤキバーガーを所望する!」


 テーブルに両手を付き、不意に立ち上がって豪語するサリアさん。

 グレーアッシュの尻尾をぶんぶん振ってノリノリだ……でもそれ、自分の食べたいメニューを言っただけだね。またマルクナルドに連れていけってよく言っているし。当然、テリヤキは却下です。


 とはいえ、バーガーは名案だ。焼いた肉を味付けして、何かの生地で挟んで提供する。お手軽だし、食器も必要ない。


 問題はサンドする素材の方。黒パン以外で他に候補はあるだろうか……そんな風に説明しつつ議論を重ねていった結果、とある豆の粉を練った生地を採用することになった。ケネトさんの発案だ。


 地方の農村では定番らしく、フラットブレッド状のあっさり味。しかも在庫の手配が容易なうえ、コストも割安。もちろんマヨネーズは抜きである。


 その流れで、必要な物資の手配をまるっとゴルドさんに依頼する。ただし、細かい器具や調味料はこっちでいくつか用意する。日本の物の方が扱いに慣れているからね。


 不謹慎かもしれないが、ちょっと楽しくなってきた。大学の学園祭でやった模擬店を思い出す。

 よおし。張り切って、孤児たちがニンマリするような炊き出しを作っちゃうぞ。


 これで、本日の予定はすべて終了。

 そういえば、縄跳び中だったはずの獣耳幼女たちがやけに静かだな。


 気になったので、断りを入れて様子を見に行く。そして近づいた途端、思わず苦笑いを浮かべる――三人揃って尻尾をふりふりしながら、女神像にシールを張りたくっていたのだ。


「わあ……とっても上手に貼れているね?」


「えへへ、がんばってはったの! 女神さま、よろこんでくれるかな?」


「だいじょぶ! ミレイシュさまも、カワイイとぜったいうれしいのよ!」


 輝くような笑顔で答えてくれるエマとリリ。ルルは、真剣な目つきで黙々と手を動かし続けている。

 

 前にも、女神像に色を塗りたくっていたことがあったなあ……ごめんなさい、ミレイシュ様。後ほど言い聞かせて綺麗にしますので、どうかお許しください。


 シールの惨状を目で追うついでに、ドーナツの箱がなくなっていることに気づく。知らぬ間にお取り寄せなさったのだろう。また神秘的な光景を見られるかと少し期待したけど、アレは本当に特別だったとフィーナさんが言っていたな。


 お客様がお帰りになったら、お詫びがてらビールやレモンサワーを追加でお供えしますね。


 さて、ご挨拶とお片付けを済ませて我が家へ戻ろう。少し遅くなったけど、美味しいお昼ごはんを作るとしますか。

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黒パンが主食の国に、マヨたっぷりのテリヤキバーガーはオーバースペック通り越してオーパーツでしょww ケバブ?トルティーヤもどきでもカルチャーショックは確実です。 炊き出しと簡単な寺子屋をセットにすれば…
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