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第1話 聖女を殺れ

 ぬいぐるみを手にした女神の要求は、シンプルなものだった。


「転生させてあげるわ。ただし、転生ボーナスの発動条件は聖女を殺すこと。でなければあなたはただの出来損ない。女神の加護もない、ただの木偶よ」


 そう言って、瑞々しくも年若い女神が氷の眼差しを向けてくる。

 どうやら俺は死んだらしい。そして今、異世界転生という実にテンプレな展開に巻き込まれている。

 俺は前世でアマチュアのしがない物書きだった。不人気作家を絵に描いたよう、ネット上に上げた作品はさして読まれず、大抵は放置していたユーザーだ。


 ちなみにSNS上の「RTした小説を読みに行く」という企画主でもあった。率直を信条に、感想や評価をつけている。最近の読者ユーザーは感想も評価も大して残さない。理由は分からないが、そもそもアカウントを持っていないのかもしれない。

 ならば俺が書いてやろう。

 創作する者は広く仲間だ。ライバルに塩を送るになんの躊躇いやあらん。絶対評価つけない書き手ユーザーと、俺は一線を画す。自分が面白いと思った作品は当然、読まれないユーザーに出来るせめてものエール。俺に出来ることをしていただけだ。


「こちらも評価をくれ」という下心は存在しない。「相互評価依頼」は不正に繋がる。だが違う、俺はただ書いて読む仲間達が好きなのだ。万人を愛することは出来なくとも、作品は評価出来る。認めるものは認めるべきだ。

 そんな俺は最近創作活動を再開し、上げた作品は読者ユーザーに届いたらしい。日に一万のアクセスを記録する作品を書けた。しかし一つの作品に過ぎず、他は散々だ。

 そんな俺は、なぜ死んだのだろう。殺害予告を受けたのは、別の熊科ユーザーなのだが。


 確かに「有名なろうRT企画主」と某大相撲な令嬢のあとがきに記されてはいる。が、複数人の一人過ぎない。俺だけやけに、上から目線なアドバイスを送ったことになっているのは、一応事実に則っている。


 彼はプロの小説家になり、俺は女神な転生展開。えらい差だ。これが格差社会か。実力だが。

 Web小説を読み過ぎたのか、前世の「タイトルを変えなさい」という実に上からなアドバイス善行のお陰なのか。なんのお陰か知らないが、とにかく俺は転生出来るらしい。苛烈な条件付きだが。

 改めて確かめる。


「なぜ聖女を殺す必要があるんです?」

「聖女のクセに生意気よ。信者が生まれ始めてる。実在しない女神より聖女の方がいいって、新たな女神になりかねないわ。だから殺しなさい」


 なんて切実にして自分勝手。とても女神と思えない。だがしかし、実行せねば転生ボーナスが機能しない。なんてことだ、逃げ道がない。

 女神は目を細め続ける。


「転生と言っても生まれたての赤ん坊からやり直す必要はないわ」

「赤ん坊には無理ですからね」

「そう。というわけで二十歳の状態で転生させてあげるわ」


 なんと、青春時代が存在しない。なんて過酷な転生展開。いきなり成人扱いとか、容赦の欠片もありはしない。これでは、幼なじみとのラブコメ展開とか全く期待出来ないじゃないか。色々やり直したかったのに。あれやこれやと。

 だが、これなら酒が飲める。とはいえ酒に逃げる人生が今から思いやられるな。気をつけよう。


「聖女を殺りなさい。まずはそこからよ」


 冷たく突き放され、俺はただそれを受け入れるしかなかった。

「簡単説明」を記していきます。用語説明みたいなものになります。

・ぬいぐるみ。カクヨムの公式イベントのお題。成人年齢に達した男性への過酷なミッション。公式からの嫌がらせとも言う。結果この作品が生まれた。

・熊科ユーザー。エッセイとSNSで有名な熊さん。

・大相撲な令嬢。商業作品大相撲令嬢。川端先生のデビュー作。コミックも出ています。どうぞよろしく!

・転生が二十歳。赤ん坊では暗殺ミッションがこなせない。なんで赤ちゃんからな展開多いのか私、気になります。

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