2月1日
2月1日。白い壁の部屋で女性同士の会話。
「……ハッ!?」
「あの……あたし、あっ……体重!!??」
「……オハヨ。運ばれて来た時はビックリしたよ。ここウチの病院。お母さんの事は……後で先生から話すから、その時に聞いてね。良いニュースも……悪いニュースもあるから。体重の事はねセーフ。肘見て肘」
「肘……痛ッ!」
「車から落ちた時に文字通り肘の肉が削れて出血大サービス。ギリギリだったね。看護記録の体重は私が計ったよ。63.99kg。服が血を吸って重そうだったから少し差っ引いておいた。ほら、これ、緊急搬送時の記録ね。本当は駄目だけど彼に見せておいたよ。近くに居るから多分後で来るはず」
「……ありがとう」
「私が勤務中で、なおかつ搬送先がココで良かったね。運が良かったんだ。幸せになりなよ」
「……ありがとう」
「お母さんの事はね。……先生が後で来ると思う。ちゃんと話し合って」
「……ありがとう」
「あと、結婚おめでとう」
「……ありがとう」
「いや、マジで……お母さんは?」
◇ ◇ ◇ ◇
白い壁の部屋で男性と女性の話。
「……すまん」
「謝らないで」
「……すまん、……あ」
「ふふ」
「いや、申し訳ない気持ちなんだ」
「いいのよ、これでハッピーエンドだから勘弁してあげるる」
「もう分かってると思うが、俺は病気だ。5年生存率とかいう話も出てる。治る見込みはドナー頼りだ。だが、お前が頑張って痩せて奇跡を起こした様に、俺も努力したいと思う。何としても幸せにする。だから、結婚してくれ」
「……はい」
「……ありがとう。嬉しい」
「食事管理だって睡眠だって死ぬ気で調整して健康に保つさ。そう簡単には死にやしない。愛してる」
「……私もよ」
◇ ◇ ◇ ◇
白い壁の部屋で医師と女性の会話。
「〜お母さんの件は私からは以上です。あと……お母さんのドナーカードの件ですが、提供にサインされています。こちらご家族の意思はどうなのかというところまで確認しても宜しいでしょうか?」
「えっ、お母さんの提供先があるんですか?」
「個人情報となりますので、誰がとは言いませんが……あります」
「私的にはオールオッケーです」
「生脚魅惑のマーメイドですね……いや、失礼しました」
「はい」




