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続編を企画します。旦那様?



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 私は、密かに計画している。

 リーフェン公爵の願いを叶えてあげようと思うのだ。


 そう、それは『聖なる瞳の乙女』続編!


「ハンス?」


「はい、姫様……じゃなかった、奥様」


「観てきたわ。あなたの脚本は素晴らしいわね?」


「ありがとうございます。姫様!」


 本当に嬉しそうなハンス。


 ――――私、ハンスがおだてに弱いの知っているんだから。


 まあ、内容がちょっと、私にとっては恥ずかしかったけど、脚本は本当に良かったと思う。


「ぜひ、続編が観たいの」


「早速書き始めます!」


 今回のタイトルは『聖なる瞳の乙女の加護を受けし者』にさせてもらう。


 前回、省かれてしまった、キースの幼少期と騎士団に入ってからの活躍を、余すところなく盛り込んだ続編を!


 そして、ディル様と共に戦う姿も!

 戦場で、ディル様とキースが見つめ合う感じとか!


 前回は、物語の大筋は、事実に基づいているにもかかわらず、なぜが私のセリフは全て「キースのこと大好きっ!」て感じに脚色されていた。


 ――――うん。もちろん好きですよ。旦那様?


 でも、それを人前に晒していいのかどうかは、別問題なのだ。


「前回は、旦那様……じゃなかった。キースの活躍が少なかったように思うの。多分ご婦人たちの需要は多いと思うわ。だから、お願いね? あと、ディル様の活躍も観たいわ」


 ――――ふふふ、これで完璧。


 しかし、そう思って喜んでいた私が甘かった。甘かったのだ。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



「聖なる瞳の乙女の続編を観に行こう!」


 ある昼下がり、なぜかここ数週間機嫌がとても良かったリーフェン公爵に誘われた。


 ――――いよいよ、復讐を遂げる時が来たわ。


「ええ、今日が初日ですね。楽しみにしていたんですよ。『聖なる瞳の乙女の加護を受けし者』」


「え? ……そのタイトル?」


 リーフェン公爵が、その動きを止めた。


 そう、これからリーフェン公爵も羞恥心で悶える時間が始まるのだ。


「さ? 行きましょう。旦那様?」


「えっ、聞き間違いかな? え?」


 今日も完璧にオシャレした私と、今日も素敵なリーフェン公爵。


 もちろん私は、ドレスの上に黒いローブを被ったけれど、ローブの中はお揃いなのだ。


 そして、今日も私たちは、劇場の一等席から舞台を観ることになった。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



「ひぃっ!」


 結局私は、両手で顔を覆い、羞恥心に耐えていた。


『アンナ、大好きだ。大きくなったら僕と結婚しよう?』


「えっ、幼少キース可愛すぎ……」


『騎士になったのは、アンナのためだ。愛している。……俺を選んで』


「ひゃ?!」


『やっと会えた……。アンナ! もう離さない』


「ど、どうして。どうして、主役の二人の名前、キースとアンナなのぉっ?!」


 私は失念していたのだ。キースの恥ずかしいセリフをたくさん盛り込んで、リーフェン公爵に羞恥心を与える計画だったはず!


 でも、そのセリフの相手はアンナだった。


 隣のリーフェン公爵は、時々私を見て、意味深に笑い、その後また素知らぬ顔で観劇している。


 なぜ、私ばかりが恥ずかしがっているのだろうか。


「ね? ルティア」


「なっ、なんですか旦那様」


「少しキースの台詞の甘さが足りなくない? 俺だったらこう言うな」


 そのまま、リーフェン公爵は内緒話でもするように、私の耳元にその唇を近づけてきた。


「ルティア………………」


「――――っ? ――っ?!」


 結局、今回も私はリーフェン公爵に勝てなかった。



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