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【完結】そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?  作者: 氷雨そら
幸せな結婚生活を目指しましょう。旦那様?
31/43

第三十一話 羞恥心で悶えそうです。旦那様?



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 その日、二枚目のローブを使うことになるなんて、一体だれが予想できただろう。アイシュタール公爵家の一年分の予算が、半日で吹っ飛んでいく。そしてその二倍なら、二年分だ。


 なぜか午後から、観劇をすることになった。こうなってしまっては、途中でローブを替える必要がある。


 たぶんこれは、歴史上でも一番高額な観劇に違いない。


 しかも貴族席の中でも、一番いい席はいつでも観られるように空けてあったらしい。


「あの……本当に観る気ですか。旦那様?」


「うん、せっかくだから観ようよ」


 私は、すでに席に着いてしまったとはいえまだ覚悟を決められずにいた。


 私たちの前世を劇にしてしまったらしい旦那様。

 王都で今、一番人気というのは冗談ではなかったらしい。観客席は満席だった。


「えーと。この沢山の人、全部この劇を見に来ているんですよね」


「それ以外にないだろうね」


「――――聖なる瞳の乙女っていう題名は誰が決めたんですか。というよりも脚本誰が書いたんですか」


「あー。君の侍従のハンスっていただろう? 彼の才能は素晴らしいね」


 登場機会がないから忘れられていたかもしれないが、リンとともに私についてきてくれた侍従のハンス。


 ――――こんなところに思わぬ伏兵がいるとは!


 よく考えれば、脚本家はハンス! そのままじゃないか!?


 ああ、もし気がついていたら止めていたのに。

 どう考えても、私が眠っていた一週間くらいの間に書きあげられるボリュームじゃない。

 つまり、以前からの計画的犯行……。


 そうこうしている間に、劇は始まった。そして、私は約二時間、羞恥心で悶え続けることになる。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 私が悶え続けて、約一時間半。物語は、佳境に入っていた。


 戦場の丘の上に立ったヒロインが、その瞳の力を使う。

 誰も彼もが、魔力を失い戦いの手を止める。


『キース!!』


 しかし、キースは敵の刃に倒れてしまう。駆け寄ろうとしたヒロインが、途中で止まる。そう、ここは事実と同じだ。それは認める。


 しかし問題はその後だった。


『キース、愛しています。私のすべてはあなたのために』


「ふぁっ?! 言ってない! 言ってないよそんなこと!」


 両手で顔を塞いでいるのに、指の隙間から見ずにはいられないらしい可愛い妻を、リーフェン公爵は隣で存分に堪能していた。


「しかも何で、登場人物の名前キースとアンナなのぉ! 恥ずか死ぬ!!」


「これが見たかったと言っても過言ではない……」


 この後、二人は手を取り合って戦場から去る。

 その後、二人がどこに行ったかは誰も知らない。


「――――うっ、キース!!」


 素直すぎる妻が、涙をぼろぼろ流すのを見て、リーフェン公爵も少しもらい泣きした。この後の展開に関しては、魔眼の秘密を広めてしまうためあえて脚本には載せなかった。


 このあと、やりすぎてしまったリーフェン公爵は、私に本気で怒られるのだが、「はぁ。ルティアの反応が可愛かった。続編」とつぶやいていたので、まったく懲りてはいないようだ。



最後までご覧いただきありがとうございました。


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