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【完結】そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?  作者: 氷雨そら
幸せな結婚生活を目指しましょう。旦那様?
28/43

第二十八話 王宮についちゃいました。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 店から出るといつのまにか、馬車は公爵家のものに入れ替わっていた。リーフェン公爵のエスコートで乗り込む。先ほどの馬車よりも、格段に豪華で座り心地も良かった。


「王宮に行くのがもったいない気がするな……。このまま二人で、逃げてしまおうか」


「……魔力のない人たちが住む村にですか? でも、旦那様は魔力があるから、公爵家にいるのとあまり変わらないです」


 そう、リーフェン公爵が用意してくれた環境は、本当に過ごしやすい。幼馴染と過ごした、あの懐かしい故郷を思い出すほどに。


「旦那様……。本当に感謝してるんです。私、とても幸せです」


「……そう言ってもらえて嬉しいけど、まだこれからもっと幸せになるんだよ。ルティアは」


「――――旦那様も、一緒にですか?」


「……本当に可愛いな?! なんであの時に攫ってしまわなかったのか、自分の馬鹿さ加減を呪いたくなる」


 そう言ってリーフェン公爵は、私のことを強く抱きしめてきた。

 たぶん、始めからキースに伝えていれば、何とかして一緒にいられる方法を探してくれたに違いない。たとえそれが、どこかに連れ去ってしまうという方法なのだとしても。


「――――それも良かったのかもしれないですね」


「ルティア、今からでも」


 耳元でささやかれる誘惑は、何物にも代えがたいほどの魅力的な提案。

 でも……。公爵家で待っていてくれるルティアを囲むたくさんの笑顔、信頼、愛情……。もう捨てるなんて考えることができない。


「――――今はもう、幸せいっぱいなので、攫わないでくださいね」


 そういうと、リーフェン公爵はなぜかかなり残念そうな顔をした。


 ――――攫いたかったのだろうか?


「王宮に行けば、ルティアまで巻き込まれる」


「――――旦那様」


「誰の目にも触れさせずに、幸せな屋敷の中でただ幸せに過ごしてほしかったのに」


 それは、ずっと心のどこかで願い続けていた願望。

 それと同時に、もっと強く願っていたことがある。


「私も、旦那様のことを守りたいんです。今度こそ」


「すでに、毎日救われているよ。ルティアに」


 そして、馬車は王宮に着いた。

 ずっとここで過ごしてきたのに、なぜかもう自分の家だとは思えない。

 今すぐ公爵家に帰りたい、心に重苦しいほど厚い雲がかかっていく。


「ほら……。幸せに過ごしていることを、周囲に知らしめて」


「――――わかりました。旦那様」


 旦那様が、優雅に差しのべた手に、私は手を重ねる。

 その瞳はただ私を優しく見つめていた。



最後までご覧いただきありがとうございました。


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