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【完結】そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?  作者: 氷雨そら
幸せな結婚生活を目指しましょう。旦那様?
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第二十六話 名前で呼んで欲しいんですか。旦那様?



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 なぜか、王宮に行くのに、公爵家の馬車は使わないらしい。屋敷の前には、普通の馬車が停まっていた。


「あとで乗り換えるから」


 そう言って、なぜか意味深に笑うリーフェン公爵。


 リーフェン公爵の出立ちは、黒い騎士の正装。金の房飾りも、その瞳に映える。そして何故か、沢山の勲章と共に私の瞳の色をした、例のお蔵入りしたはずのブローチが添えられている。

 

 真っ黒なローブをまとっている私は、我ながら魔女みたいだと思う。そしてへこむ。


 首元に手を入れ、そっとリーフェン公爵の瞳の色のような宝石のペンダントに触れると、少しだけ自信が回復した。


 そう。私だってローブの中は、王宮仕様。見えないおしゃれというやつだと、無理やり納得する。


 馬車は、急勾配の坂を登っていく。

 そしてガタンと一度だけ揺れた後に、目的地に到着した。


「ここは?」


「うん、一番俺が好きな景色」


 リーフェン公爵が、朝日の中で笑う。

 こんなふうに、魔力を奪われず、元気に笑うあなたを見るのはどれ位ぶりだろうか。


 そして、どれだけそれを願っていたか。叶って初めて気づくことがあるなんて……。


「また泣きそうになっているの? 俺としては、その泣き顔好きだけど。特に俺が泣かせていると思うと……」


「ひどい」


「……だって、嬉し涙だろう?」


 リーフェン公爵が、膝をついて私を見上げる。金色の瞳の中に、泣きそうな顔の私が映り込む。


 こんなに長い間、見つめ合っていたことが今まであっただろうか。


 ――――ううん。幼馴染だった時から、初めて。


「その見た目、何もかも全て好きだけど……。その瞳が一番好きだ。ルティア」


「旦那様?」


 魔眼だということが分かってから、この瞳を褒められたことなんてなかったのに。


「ずっと見ていたい。魔力が空になってもいいと思ってしまうほど魅力的だ。……あと、名前で呼んで」


「旦那様……」


「リーフェンと……。もう一度ルティアの声で聴きたい」


 キースのことは、名前で呼んでいた。それなのに、リーフェン公爵の名前は呼ばないのは、魔眼が安定しなくなるからで……。


 魔眼の力を半日だけでも抑えてくれる、このローブをまとった今この瞬間だけは、その言い訳が通用しない。


 たった、名前を呼ぶだけのことを何故こんなに躊躇うんだろう。


「このままだと、夜に何度も呼ぶことになるよ?」


「えっ?」


「……」


 それは何故か、とても恐ろしいことに思える。何故だかわからないのに、今言っておいた方がいいと何かが私に警告している。


「リー……フェン」


「もう一度」


「リーフェン!」


「うん、君のリーフェンだ」


 そのまま、手の甲に口付けがそっと落とされる。


「俺と結婚して……ルティア」


「もう、してるじゃないですか」


「今の関係じゃ足りない。それにちゃんと言っていなかった」


 リーフェン公爵が、立ち上がる様子はない。

 跪いたまま……まるで懇願するように。


「返事をくれないか。できれば肯定を」


「はい。私と、結婚してください。旦那様」


「……リーフェンだよ。あとで覚えておいで?」


 そんなことを言いながらも、やっと安心したみたいに笑って、リーフェン公爵は立ち上がり、私を抱きしめた。




最後までご覧いただきありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 幼なじみ悲恋からの溺愛を一気読み!ありがとうございました リーフェン様の金色の瞳にうっとりです(//∇//) 甘い蜂蜜みたいな溺愛してくるのに、泣き顔も好きとかー♪ [一言] ミスミ騎士…
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