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【完結】そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?  作者: 氷雨そら
望まれない結婚ではないのですか。旦那様?
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第十四話 選んでください。旦那様?



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 そして、私たちは食卓に着いた。リーフェン公爵が用意した小さなテーブルにあふれかえる食事。ちょっと気合いを入れて作りすぎたかもしれない。食べ切れるかしら。


「懐かしい……俺の好きなものばかりだ。覚えていて、くれたんだ」


「忘れられないくらい、作らされましたからね」


「そうだったな……」


 そして、リーフェン公爵はすごい勢いで食べ始めた。そういえば、キースもよく食べる人だったとぼんやりリーフェン公爵が食べる様子を眺めながら思いを馳せた。


「むぐ!」


 思いを馳せていたら、口の中にグラタンが押し込まれた。


「ほら、ちゃんと食べる」


 気が付くと、スプーンを手にしたリーフェン公爵が私の口に食事を運んでいる。

 

 ――――ちょっと、新婚の夫婦じゃないんだから。

 ――――新婚夫婦だったわ。


 それでも何とか断ろうとしたのに、食べ終わって言おうと口を開いた瞬間、今度はトマトの冷菜が押し込まれる。恥ずかしいじゃないか。


「むぐむぐっ……」


 私は、非難してますよ! という気持ちを込めた目でリーフェン公爵をにらむ。にらまれた上に、また魔力まで吸いとられたくせに、リーフェン公爵はお腹を抱えて笑い始めた。許すまじ。


「もうっ。食事中にふざけるなんて、本当に怒りますから!」


「ルティア、これは夫婦のコミュニケーションというものだ」


「――――え?」


 夫婦と言った。

 私のことを憎んでいたのではなかったの。


「ルティア……ごちそうさま。少しだけついてきてほしい」


 手を引かれて連れていかれた先は、星の瞬くバルコニーだった。涼しい風が二人の間を吹き抜けていく。私の目の前に立った、リーフェン公爵が手の甲にそっとキスをした。


「ルティアを妻として愛すると誓うよ。……でも、それだけではだめだということはわかっている。どうしたら、ルティアは俺のものになるの」


「本当に……いいんですか」


 たぶん、この方法を聞いたらリーフェン公爵は嫌悪感をあらわにするかもしれない。私の魔眼は……ある方法を使えば、リーフェン公爵にとって力になることができる。


「――――私は悪い女です」


「ルティア。そんな言葉にはもう騙されないよ」


「これから言うことは、この国では禁忌です」


「……まさか」


 そう、魔眼を持った人間は、一部の人間にとっては喉から手が出るほど欲しい存在なのだ。

 それを知らなかったアンナは、その人生を終える直前、出会った魔術師にその事実を告げられた。


 ――――魔眼に魅入られた存在。それは、王国で秘匿されている。そして忌むべき禁忌とされている。


「でも、公爵家の人間である旦那様なら、もう知っていますよね」


「――――俺はそれを望まない。ルティアを利用する気はない」


「私のこと、愛してくれて妻としてそばに置いてくれるなら、私はそれでいいです」


 その方法を取れば、私の魔眼は少なくともリーフェン公爵にだけは害を与えない。

 だから、その方法をリーフェン公爵が選んでくれれば、私はずっとあなたのそばに。


「ルティア! 俺は」


 その時、ミスミ騎士長がひどく慌てた様子でバルコニーに駆け込んできた。

 基本的に、この場所に誰かが来るなんてことはあり得ない。


 ――――緊急事態。


 そのことはさすがの私にも、理解できた。



最後までご覧いただきありがとうございました。


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