第2話:魔王信長
「織田の軍勢と我らの軍勢が衝突するまであと3分といったところでしょうか」
「ふん。俺達の勝利は決まっている」
伊達政宗を乗せた戦闘機は、片倉景綱により操縦されていた。
上空から地上を眺めて余裕を保っていられるのも今のうち。彼らの目の前にはすでに魔王によって絶望が迫っていた。
「正宗! ちょっと揺れるぞ!」
「なんだ? なんか撃ってきた?」
「・・・・・・ミサイルだ。それも凄い数・・・・・・!」
「あぁ!? なんだコイツは!?」
目の前には、凄まじい数のミサイル。どうやっても交わしきるのは不可能な状況だった。
彼等が普通だったなら・・・・・・
「針路を空ける! 真っ直ぐ進め!!」
「行きますよ!」
戦闘機は一切スピードを緩めずに、方向も変えず一直線にミサイルの中へ突っ込んでいった。
そんな高速で飛ぶ戦闘機の窓を割って、伊達政宗は体を乗り出した。
「オラァ! 喰らいやがれ!」
その手には、大きなロケットランチャーが片手に2つずつ、合計で4つのロケットランチャーが。その全てを同時に使い、戦闘機の針路に向けて弾丸を放った。
ロケットランチャーの弾は、何かにぶつかると爆風とともに、強い熱を出す。
そのロケットランチャーの弾同士をぶつけて、戦闘機の前方30メートル程の所に大爆発を起こした。
その爆風でミサイルは方向を変え、次々と地面に落ちていった。
飛行区域の真下には、織田の軍勢がいた。
「さすがは正宗様だな・・・・・・」
「よせ景綱。正宗でいい」
戦闘機はさらにスピードを増し、ホワイトハウスの方に猛スピードで進んでいた。
「ご報告です! どうやら飛行物体は墜落していないようです!」
「そうか・・・・・・くくく・・・・・・そうでなくてはな」
「は・・・・・・? よろしいのですか?」
「何がだ? ただこの魔王が自ら手を下す結果になったのみ・・・・・・来い独眼流。魔王の力見せようぞ!」
信長は、ホワイトハウスから出た。
そして空を見た。
そこには音を立てて飛ぶ、一機の戦闘機があった。
そしてその戦闘機を見上げる信長、そしてホワイトハウスに次々とロケットランチャーの弾が落とされた。
「ほぉう・・・・・・」
信長はこれを踊るように動きかわした。
そして戦闘機は一度通り過ぎ、旋回して角度を変えて信長に直接体当たりを仕掛けてきた。
「この程度・・・・・・独眼流。がっかりだ」
500キロ近いスピードで飛ぶ戦闘機の軌道を、信長は足蹴りで変えた。
信長に無理やり軌道を変えられた戦闘機は、再離陸はできず、地面を滑っていき空港の建物に衝突し、爆発炎上した。
「何ががっかりだ?」
独眼流、伊達政宗は信長の足蹴りの瞬間に戦闘機の窓に開いていた大穴から飛び出して、信長のすぐ近くに着地していた。
その手には合計4本のロケットランチャー。
それを全て信長に向けて正宗は言った。
「俺の勝ちだぜ」
「・・・・・・独眼流伊達政宗。それほどの闘志に実力を兼ね備え・・・・・・我は非常に悲しい」
「あ?」
「それゆえに期を逃し、今魔王の前に朽ちることを・・・・・・」
信長は機関銃を正宗に向けて言った。
「その武器は確かに威力は大きい。だがその弾が我にとどくのと・・・・・・高速で飛ぶこの弾が、貴様の命を奪い去るのと、どちらが速いと思う?」
「期を逃してんのはテメェだぜ? すぐに俺の命を奪うべきだったな・・・・・・」
伊達政宗はロケットランチャーを構えた。
その巨大なロケットランチャー4つは、完全に正宗の体を隠した。
だが、信長は一切退かずに機関銃を正宗に向けて乱射した。乱射といっても1発1発の精度は凄まじく、正宗の持つロケットランチャー全ての銃口を自分から逸らし、それでいて正宗の体を打ち抜く隙間を開けようとした。
信長の恐ろしく正確な乱射は、正宗のバランスを崩させ、足をロケットランチャーの陰から外させた。
その隙を信長が見逃すはずも無く、機関銃の弾は正宗の両足を打ち抜いた。
「イッテ・・・・・・信長ァ!!」
「数を撃てば当たるものでもない!」
正宗は、ロケットランチャーを構えなおし、信長に向けて一斉射撃した。
だがその弾は信長にはかすりもしない。
「独眼流伊達政宗。やはりこの程度・・・・・・興醒めだ」
「待て! 何処に行く・・・・・・?」
「心配するな、貴様は殺す」
信長は建物の中に歩いていった。
そしてミサイルの準備をしようとしたが、それが実行される前に、伊達の軍勢がこの空港にたどりついた。
その数4500人。戦車に重火器もかなりの数がある。
「死ぬのは・・・・・・魔王信長! お前だ!」
伊達の軍勢による一斉射撃が始まった。
その威力は凄まじく、織田信長のいる建物の中の兵器、そしてその建物ごとをあっという間に倒壊させた。
「魔王も所詮は人だな・・・・・・」
「そうは思いませんが」
「!!」
伊達政宗のすぐ後ろには、織田信長の側近、明智光秀がやってきていた。
その手には武器という武器も無く、体も重装備で固めているわけでもない。
「余裕か・・・・・・それとも諦めたか? 明智光秀よ」
「どちらでも・・・・・・私はあなたに忠告に来たのです」
「なに・・・・・・?」
「だから言ったであろう? 数を撃てば当たるものではないと」
その声の主は明智光秀ではない。倒壊した建物の中で、完全に倒したと伊達政宗は思っていた、魔王織田信長のものだ。
信長は巨大な戦闘機に乗っていた。
戦闘機からははしごが下ろされていて、光秀がそれに捕まると、信長は上空高くへと戦闘機で高度を上げていった。
「逃げるか・・・・・・魔王信長!」
「逃げると言うか? だから貴様は我には勝てん。考えてもみろ、ここが我の拠点ならなぜ他の兵士がいない?」
「そういえばここにはほとんど兵士は・・・・・・」
「ま、まさか!!」
片倉景綱があることに気付いた。
だがそれは伊達軍の敗北を意味している。
「・・・・・・大将自ら囮か?」
「いえ・・・・・・おそらくはこの地が囮なのだろうと・・・・・・」
正宗は上空高くのいる信長の乗る戦闘機を見上げた。
その戦闘機には大量の荷がぶら下げられていた。
それはおそらく広範囲を一気に殲滅できるほどの強大な兵器。
そして伊達の軍勢に逃走も許さず、空から織田信長による攻撃は行われた。
落とされたものは、大量の焼夷弾。
あたりは一気に火の海となり、伊達の軍勢を焼き尽くした。