幼なじみが自分の姉を引き取って欲しいと言ってくるのだが
ある日の午後、教室で昼めしを食っている時、幼なじみがにわかに切り出した。
「ねーねー、あたしのねーちゃん引き取ってよ」
「誰が?」
「アンタんちが」
俺は暫し思い巡らし、
「俺とお前って付き合ってるよな?」
「そだよ」
弁当の中の玉子焼き食べながら答えやがる。
次の言葉に迷っていたところ、
「ああ、違う違う。アンタの兄ちゃんに引き取って欲しいって事」
何気ない調子で言ってくる。一瞬、姉妹丼のお誘いかと迷ってしまった。
「ウチのねーちゃんもそろそろ良い年じゃない?だから適当な相手がいないかと親がうるさいのよ」
「お前の姉さんって何歳だっけ?」
「もう三十路かなー」
おにぎりをもしゃもしゃ食べながら返してくる。そうか、もう三十か。時の経つのも早いもんだ。
「でさ、アンタの一番上の兄貴はまだ独身で結構いってるじゃん?だからちょうど良いんじゃないかって」
確かに長兄は歳もいっているし独身だ。それにこいつの姉には好意を抱いていた時もあり、何度か告白していたりもする。
「けどさ、兄貴は薄給だぞ?そのせいで何度も振られてるんだし」
「たしかにねーちゃんは理想が高いからねー。
年収1000万、高身長のイケメン、国立以上の学歴を求めてるし」
そんな相手、大概いない。無論、それはコイツの姉がかなりの美人で一流企業のキャリアウーマンだからこそ言えるのだろうが。
「でもね、ねーちゃんは付き合うのはいても結婚まではいかないのよ。
ねーちゃん、料理も洗濯も掃除も裁縫も出来ないし」
「まあ、今時の女性ならそんなもんだろ」
「そんな事言ってるからいつも相手に、『いや、君とは拘束された関係に縛られたくない』とか『俺より良い奴は幾らでもいるさ、ガンバっ』て言われて捨てられんのよ。
それに、最近じゃフェミニストが強いから会社とか取引先じゃ男は怖がって話しかけてこないっていってるもん」
「そんなにフェミニストって強いのか?」
「そうらしいよ。男の人はなるべく女とは話さないし、セクハラ怖がって飲みにも誘わないんだって」
「うーむ、深刻だ」
「で、結局、出会いはお見合いとかになってくるんだけど、ちょうどアンタの兄貴がいたと思って」
「なるほと、しかし残念だな」
「何で?」
「兄貴には彼女出来たし」
「えっ?いつ?」
「この間」
「だれだれ?」
「従姉妹の娘だな、高一の」
「え?マジそれ」
「何でも向こうの方が初恋なんだと。
それで結構アタックしてたらしく、この間から付き合い始めてるな、結婚前提で」
「わぁーお…」
「お陰で兄貴はすっかりロリコン扱いだ。
まあ、相手も高校生だからロリコンには当たらないが」
「ま、まあ、年の差カップルも珍しくないし…。
けど、アンタの兄貴が駄目だとするとねーちゃんにいよいよ行き場が」
「まあ、あの人何だかんだモテるし何とかなるんじゃないか?」
「だから、そうならないんだって」
す
そんなことを言いながら過ぎていく昼の一時だった。
おしまい。