表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の娘と夢幻の勇者  作者: 誠義
6/6

幕間 春の朝

ストーリーに直接関わる話ではありませんので、暇な時にでも読んでください。

魔物との戦いから一夜明けた翌朝。

宿屋の娘であるマリアは、まだ日も昇らない時間から起きて、仕事に取り掛かろうとしていた。

真っ暗な厨房でぼんやりと見える形を頼りに置かれた燭台しょくだい蝋燭ろうそくに火をつけると、周りが淡く照らし出される。

石造りの流し台に置いた桶には井戸水が溜めてあり、冷たい水で顔を洗うと、眠気が一気に覚める。

「よしっ!今日も頑張ろう!」

まだ寝ているであろう彼らを起こさないよう小声で気合を入れ、寝巻きからメイド服に似た仕事着に着替える。

足りない食材などを確認し、市場へ出掛ける。

石造りの道を歩いて行くと昔から良く知るおじいさんや近所のおばあさんが挨拶をしてくれる。

「おはよう、マリアちゃん。」「おはよう、今日もご苦労様だね。」

「おじいちゃん、おばあちゃん!おはようございます!」

彼女はこの辺では有名で、幼い頃から両親の手伝いで一緒に買い出しに行ってたこともあり、本当の娘や孫のように可愛がられている。

市場のおじさんも昔からお世話になっていて、おまけをしてくれることも多く助かっている。

両親がいなくなってからは町の人の優しさが本当に嬉しかった。


日が昇り始め、空が白み始めた頃、買い出しを終えたマリアは厨房で朝食の準備をしていた。

「何を作ろうかなぁ。」

食材を眺めるマリアの目がキラリと光り、頷き調理に取り掛かる。

料理を進めていると、二階から誰かが降りてくる足音が聞こえ、マリアは厨房から顔を覗かせる。

一番乗りは誰だろう?

寝癖のついた金髪をくしゃくしゃしながら階段を降りてきたのはユートだった。

「おはよう!早起きだね。ユートくんが一番だよ。」

いつものように笑顔で彼に挨拶するマリア。

そんなマリアに素っ気ない態度で「おはよう。」とだけユートは告げる。

マリアはムッと頬を膨らませるが、彼の態度は昨日からこんな感じなので多少は慣れてきた。

「朝ごはんまだできてないんだぁ。すぐ作るから、顔でも洗ってちょっと待ってて!

お水は外の井戸の使ってくれていいからぁ!」

それを聞いたユートは奥へ続く通路を通り、裏口の扉を開ける。

キィーという古い木戸特有の音と共に冷たい空気が彼を出迎えた。

井戸にはロープをくくり付けたバケツが置いてあり、それを投げ込むと井戸の底からポチャンと音が聞こえた。

重いバケツを引き上げ、水を桶に移し、顔を洗う。井戸の水は冷たく、寝ぼけた頭が一気に冴えてくる。

冷たい空気に体を震わせ、明るくなり始めた空を仰ぎ見る。

「もう開いてるかな。」

大きな背伸びをして、頬を叩く。

「準備して行くか!」


肉の焼ける匂いとスープのコトコト煮込まれる音、朝食の支度をするマリアを見ていると、母さんのことを思い出す。

起きた俺に「おはよう。」と微笑みかけてくれた優しい母さんのことを…。

「目が覚めた?」

ユートに気付いたマリアは笑顔を彼に向け、声をかけるが、何故かユートは隠れるように後ろを向いてしまう。

「どうしたの?」

「いや、何でもない。それより、冒険者ギルドに行ってくる。」

「えっ⁉︎ちょっと待って!」

そう言ってマリアは厨房から体を乗り出す。

「朝ご飯食べないの?」

「あっ…えーとっ…下さい。」

その時のマリアの笑顔はいつもに増して輝いて見えた。

「それじゃ、すぐできるからちょっと待っててね!」

厨房に戻るマリアを見送ったユートはカウンターの椅子に座り、再び料理をする彼女を見つめる。

まぁ、食べてからでも遅くないか。

読んでいただきありがとうございます!

マリアメインのかなり短い話でしたが、どうでしたか?

読まなくても支障はありませんが、楽しんで読んでいただけたなら嬉しいです。

今後も短い話を挟もうかと思ってるので、良ければまた読んでください。

ではでは〜!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ