夢
どうも、誠義です。
いきなり書くことじゃないんですけど、あらすじとか前書き、後書きって書くの苦手なんですよね。
なので!あらすじ見て、あまり面白くなさそうと思われてしまうのは仕方ないことなんですが、自分としては読んで頂いてる方が、面白いと感じてもらえる物語を作っているつもりなので、是非!温かい気持ちで読んで頂ければ、幸いです。
と、ここまで作品に一切触れてませんが、そこは気にしない方向でお願いします。
風で木の葉が揺れる音が聞こえ、木々の間からは木漏れ日が差し込んでいる。
川のせせらぎと小鳥達の囀り、湖は透き通り、光を反射して輝いている。
美しいその森には色とりどりの草花と多種多様な生き物が暮らしていた。
いつもなら平和なこの森を、草を掻き分けて走る二つの人影があった。
一人は子供らしく、もう一人は女性、手を繋いで何かから必死に逃げているようで息も切れ切れに走っている。
どうやら親子のようで母親は金髪に青色の瞳、長い髪を後ろで結んでいる。
子供の方は赤い髪に赤い瞳、女の子らしい。
木々の間を走って来たためか枝や葉で切った後が頬や手の甲にあり、服も破れている箇所がある程だ。
その時、子供が木の根に足を引っ掛け転んでしまい、母親の足が止まる。
「大丈夫?」
そう言いながら娘を抱き上げ、再び走り出す。
「ごめんなさい…。」
泣きそうになりながら、娘は母親にぎゅっと抱きつく。
娘に微笑みかけ「大丈夫よ、大丈夫。」と抱きしめながら、木々の間を抜けていく。
やがて、開けた場所に出た二人の目の前に、突然、大きな影が降って来た。
大きな振動に足を止め、よろめく女性。
土埃が辺りに舞い上がり、現れた大きな影の正体を隠している。
森からは追っ手が迫っているのか鳥が逃げ出し、奇声のような騒がしい声が聞こえる。
そして、徐々に砂埃からその姿が見え始める。
その姿からは醜いという言葉しか出てこない化け物だった。
頭はワニ、体は熊、足は鳥という複数の生き物が混ざり合った姿をしている。
この世の生き物ではないとすぐに分かった。
身長が3メートルはある巨大な化け物が血走った赤い目で二人を睨んでいる。
ワニの口から涎が垂れ、生物が腐った時のような悪臭を放っている。
そして、人の言葉では無い何かを喋り始め、最後に奇声を上げ、こちらに近付いてくる。
まるで獲物を追い詰める肉食獣の様に、少しずつ、獲物の恐怖を楽しんでいる様だ。
その時、森の方で叫び声が聞こえ、何かを切り裂く音と倒れる音が森に響く。
その後は何も聞こえなくなり、静かになった。
目の前の化け物は危険を感じたのか、威嚇の様な唸り声を発し始めた。
やがて森から一人の男性が現れた。
燃える様な赤い髪と赤い瞳、その瞳は女性達を襲っている化け物を睨みつけ、怒りが込められている。
黒い鎧に身を包み、赤いマントを翻しながらこちらに歩いてくる。
その手には銀色に鈍く光る剣が握られ、刀身は彼女たちを追っていたであろう化け物の赤黒い血液が付いている。
その姿を見て、化け物は怯え出し、何かを呟きながら、鎧の男とは反対方向へ逃げていく。
鎧の男は、腕を上げ、手の平を天空へ向けると、そのまま化け物の方向へ振り下ろした。
それと同時に、雷が空を切り裂き、轟音とともに大地を抉る。
光が周囲を包み、衝撃が空気を揺らす。
衝撃波が彼女たちを襲おうとした時、目の前に鎧の男が現れ、二人に覆い被さる。
静けさが戻ると、懐かしい匂いと優しい声が彼女を包み込んだ。
「大丈夫かい?」鎧の男がこちらに問いかけている。
赤い瞳には殺気ではなく、優しさが込められ、彼女と女の子を心配そうに見つめている。
その言葉に緊張が解け、恐怖ではなく、安心が彼女の瞳に涙として現れた。
「えぇ、この子も無事よ。」
二人は微笑み合い、抱きしめ合った。
二人に挟まれる形に抱きしめられている少女は苦しそうだが、幸せそうに笑っている。
それを見て二人は微笑み、さらにぎゅっと抱きしめる。
大切な人の存在を確かめるように、強く、強く、抱きしめ合う。
空に黒い雲が広がり、生暖かく気味の悪い風が吹き始め、雷鳴が轟き、空気が重くなったかのように感じる。
まるで、世界が終わりを迎えるかのような光景だ。
その時、雷鳴と共に空が裂け、空間が歪み、大きく口を開けたかのような裂け目が出現した。
地割れを起こしたかのような裂け目の中は赤黒く、渦を巻き、生き物の体内にも見える。
「あれはゲート⁉︎」鎧の男が驚いた声を上げる。
裂け目から赤黒いドロドロとした粘性のある液体が噴き出し、彼らの近くに零れ落ちる。
その液体はさっきの化け物と同じ生物の腐ったような悪臭を放ち、触れた大地が腐っていく。
「深く吸い込むな。瘴気だ。
肺を腐らせ、体内から毒に蝕まれる。ここを離れるぞ。」
そう言うと鎧の男は二人を立ち上がらせ、裂け目から溢れ出る液体とは逆の方向へ向かうように言う。
「そんなに焦って何処へ行くんです、父上?」
走り出そうとした瞬間、裂け目から声が聞こえた。
冷たく、感情の無い声。
父上と言ったその声には聞き覚えがあるし、忘れるはずがない。
自分が生み出したもう一人の自分、いや、息子のことを忘れられるわけがない。
裂け目から液体と共に鎧に身を包んだ男が現れ、ゆっくりと地面に降り立った。
その姿は目の前の黒い鎧の男と瓜二つだが、顔は似ていても、髪は白く、瞳は金色に鈍く光っているが、そこには生気が感じられず、まるで死人の様だった。
「ルーン…何故お前が此処に…。」
その言葉に気味の悪い笑い声を上げるルーンと呼ばれる男。
顔に手を当て、上を向きながら笑っている。
「何故って?決まってるでしょう。父上、貴方を殺すためですよ。」
信じられない言葉を発した男の姿は、彼女の目には、まるで父親を殺すのを楽しみにしているかのように映った。
逃げなければいけない。直ぐにそう感じた。
彼は殺されてしまうかもしれない。この子も…。
私と彼の大切な宝物…守らないと。
「お前は逃げろ。」
彼の予想外の一言に一瞬、言葉が詰まる。
「えっ、あなたはどうするの?もちろん一緒に逃げるんでしょ?」
男は何も言わずに、彼女に背中を向けている。
「ねぇ…。」
「あいつを止めなくてはならない。
それができるのは私だけなんだ。許してくれ、ルリシア。
私は君たちを守りたい。ついでにこの世界もね。
それが、あいつとの…勇者との約束だからね。」
「ママ…どうして泣いてるの?」
涙がどんどん溢れ出てくる。
大切な人を失う辛さをもう二度と知りたくない、そう思っていたのに、また私の前から消えてしまうの?
「ごめんな、アイ。
パパ、ママのこと泣かしちゃったみたいだ。」
そう言うと、一つ呼吸を置いて言葉を続ける。
「アイ、前に話しただろう。お前の名前の意味、覚えているかい?」
うん!と大きく返事をする少女。
「そうか、その名前の通り、愛することを知って、大切な人に愛を与えて、愛を忘れない、そんな素敵な女性になって欲しい。
ルリシア、アイを頼んだ。私は君達のおかげで幸せだったよ。」
「ソール…私…私も…。」
足が勝手に彼の元へ進もうとしていた。
失いたくないと手を必死に伸ばす。
「行け!!」
その言葉は彼に駆け寄ろうとする彼女の足を止め、今やるべき事を教えていた。
伸ばしていた手は力無く下がり、我慢するように握りしめた拳は震えている。
分かっている。私がやるべき事は彼の元へ行くことじゃなく、娘を連れて逃げること。
歯を食い縛り、振り返って娘に駆け寄り、抱きかかえ走り出す。
遠ざかる父親に必死に手を伸ばそうとする少女。
「パパ!」
必死に叫び、手を伸ばす娘を少し振り向きながら、見送る。
「辛い思いをさせてすまないな、二人共…。」
まさか泣き顔が最後になるとは…もっと笑った顔が見たかった。
楽しい思い出を幸せな気持ちを、もっと、ずっと与えてやりたかった。
あの子の成長も見守ってやりたかった。
生きろ、生きてくれ。お前たちを守るためなら、私は…。
「別れは済みましたか?」
抑揚の無い言葉が響く。
「あぁ。待たせてすまなかったな、ルーン。」
「いえ、家族との別れは大切ですから。魔王の息子と言えども、情のあることだってします。」
気味の悪い笑みを浮かべながら、心にもないこと言う。
「では、いきましょうか。我が父、魔王ソールよ。」
目の前が赤く染まっていく。
体から血飛沫が上がり、足の力が抜け、ゆっくりと地面に倒れ込む。
不思議と痛みは感じない。
頭が真っ白になっていき、何も考えられなくなっていく。
金色に輝く瞳がこちらを見下ろして、何か言っているが、全く聞こえない。
私は何をしていたんだ?
そうだ…。二人を守らなければならない。
体が重く、動かない。どうして動かない…。
守ってやれなくてすまない、ルリシア、アイ。
誰でもいい、二人を救ってくれ…。
鬱蒼とした森、高い木々が陽の光を遮り、涼しい風と湿った空気が疲れた体に心地いい冷たさを与えてくれる。
どれだけ走っただろう。
歩くことさえままならない体を木に預け、倒れるように座り込む。
森の中をどこへ向かっているかも分からず、足が動く限り、走り続けた。
でも、もう、疲れと痛みで動けない。
体は擦り傷だらけで足の裏は豆が潰れ、皮が剥がれて、酷い有様だ。
逃げなきゃいけないのに、奴に追いつかれるかもしれないのに、体が言うことをきいてくれない。
アイは心配そうに私を見つめて声をかけてくれている。
その度に私は微笑み返すことしかできない。
ふと、私は彼の言葉を思い出し、左の薬指に目を落とす。
そこには彼からもらった指輪が輝いている。
赤い宝石が装飾された銀の指輪だ。
「もしもの時には、アイにこれを渡してくれ。」
多分、今がその時なんだと思う。そうよね、ソール。
「アイ、あなたにこれをあげる。」
そう言って、ルリシアはアイの手を取り、指輪を渡して、にっこりと微笑んだ。
「これはねママとパパの大切な宝物なの。」
「宝物?」
「そう。だから、大切にしてね。」
「うん!大切にする!」
そう言って、キラキラと輝く笑顔で指輪を握りしめるアイ。
「きっと、それがあなたを守ってくれるわ。」
「ママ…?」
あれ、どうしたんだろ?
急に眠くなってきて…。
もっと、アイの顔を見ていたいのに…。
アイが泣きながら呼んでる。
こんなママとパパでごめんね…。
あなたは生きて、幸せに…。
神様…どうか、この子を助けて下さい。お願いします。
「ママ…!!」
少女が母親を呼ぶ声で俺は飛び起きた。
でも、そこはいつもの俺の部屋なわけで、結婚してない俺はもちろん娘なんかいない。
いつもの天井に、いつものベット、部屋の中はまさにいつも通りだった。
でも、ベットは汗でグッショリと濡れている。まるで運動でもしたかのような汗の量だ。
それに枕も濡れている。
「涙?俺、泣いてたのか?
そういや、夢の中で誰かに呼ばれて…。助けたかった…守りたかった…?
……何言ってんだ、俺。」
夢の内容が思い出せないけど、確かに誰かが助けてって言ってた気がする。
ベットから起き上がり、洗面所に向かって、鏡を見る。
鏡に映った俺の顔は目が少し赤くなっていて、やっぱり泣いていたらしい。
「はぁ…さっさと用意しよ。」
俺は白金 望。18歳、その辺にいるような、ただの大学生だ。
将来の夢とか希望とか、そういうのがなかったから取り敢えず、家を出て、田舎の高校から東京の大学に進学してきた。
もちろんここでもそれは変わらず、夢も希望もなく、毎日を何となく過ごしている。
別に勉強が好きなわけではないので、正直、大学はつまらない。
友達も世間話をする程度の間柄だ。
高校の時みたいに遊んで、一緒にバカなことをするような奴はいない。
基本、家に引きこもって、ネットに、アニメに、ゲーム。時々、小説なんかも読む。
大学行って、バイトして、帰って寝て、次の日も大学行って、その繰り返しの毎日だ。
多分、それは今後も変わらないと思う。
就職しても仕事と家の往復、つまらない毎日が続くと思っていた。
そんなある日、俺はある夢を見るようになった。
内容は覚えていないが、あまりいい夢ではなく、どの夢も誰かが助けを求めていた。
目が覚めると汗と涙でベットも枕も濡れている。
そんな感じのことがここ最近続いていた。
正直なところ、そんな非日常的な状況を心配ではあったが、少し楽しんでもいた。
そして、俺は今日も夢を見る。
夢で見る世界に何が起こっているかも、知りもしないで、つまらない日常から逃げるように、深い眠りに落ちていく。
読んで頂きありがとうございます!誠義です!
えっ?前書きでも書いてたって?すいません、名前を覚えて欲しくて、つい書いてしまいました。
さて、今回はプロローグという回でしたが、いかがでしたでしょうか?
色々言いたいこともあるでしょうが、今後も頑張って書いていきたいと思っているので、どんな感想でもいいので、書いて頂ければ嬉しいです。多分、バンザイして喜ぶと思います。
物語については異世界だとか魔王とか勇者とか、他の作品で目にすることは多いと思うんですが、自分としてもそういった作品が好きで、今回、書いてみたんですが、やはり他の作品との差別化というか見たことがない展開だとか考えるのは難しいですね。
書いてる時は自分がそこにいるかのように、イメージしながら書いてるんですが、ポーズ取ったり、セリフ言ったり、側から見るとかなり恥ずかしいことしてます。
なので、外では書けないんで、家でしか作業はしてないんですが、家族からは変に思われているんでしょうね(笑)。
やはり後書きでも、話の内容にあまり触れてませんね。
あまり長々と書いても、皆さん読まないと思うので、この辺で終わりにしますね。
次回をお楽しみに!ではでは〜。