おしまい
*本日2回目の更新です
「あれが、封印の扉ですわね」
ナリナちゃんが果樹園の奥の壁の扉を見つけた駆け寄った。
「あれ?やっぱり開きませんわ。それどころか、壁に描かれた絵のように少しも動きませんわ」
え?
「いつも鍵なんてかかってないけどな?」
ナリナちゃんの横に立ってノブに手をかける。
普通に開く。
「本当にリーアは巫女なのですわね」
ふっとナリナちゃんが笑った。
「この扉、本当にほかの人だと開かないんだ。ナリナちゃんさっきの私を騙そうとしていたわけじゃないよね?」
「失礼ね。そんなに疑うならマイマインさんにも試してもらえばよろしいでしょう?」
ナリナちゃんがほっぺたを膨らました。
「いや、違うの、ナリナちゃんを疑ったんじゃなくて、自分にしか開けられないって言うのが信じられないだけなの」
ぱたんと閉めた扉を、マイマインさんが開けようとする。
「ナリナの言う通りだね。まるで壁のようだ」
マイマインさんが嘘をつくわけはない。あ、ナリナちゃんも信じてるけど。
「そっか、私は巫女だから開けられるのか……」
おいしいものを見分けるだけの能力。
殿下にはよだれ判定機扱いされ……巫女だなんてたいそうな呼ばれ方する存在だなんていまだに信じられないけれど……。
「さぁ、殿下と陛下がお食事をお待ちですわ。巫女様、早くお届けになりませんと」
ナリナちゃんがからかうような調子でデザート籠を私に手渡す。
「今日も巫女様に料理を選んでもらえて光栄です」
マイマインさんも楽しそうにナリナちゃんに合わせて私を巫女様と呼んだ。
なんか変なの!
私はリーアだよ。巫女の能力があったって、巫女様じゃなくてリーアでいい。
あ、そっか。月一王都で巫女という仕事をする、ただのリーアでいればいいんだ。
なんだ。たいそうな立場じゃないじゃん。変わらないじゃん。私は私だ。
「えへ、ありがとう、二人とも!行ってくるね!」
封印の扉を開き、王の果樹園へ、陛下と殿下の食事を届ける。
この生活も、今日で終わり。明日には領地に向けて出発だ。
お土産もいっぱい買ったし。父さんも母さんも喜んでくれるかなぁ~。
次の日。
「お土産って、見事に食べ物ばかりだよな……」
ウイルが馬車に積まれたお土産の山を見てため息をついた。
なによぅ!食堂の娘として立派な行いじゃないのっ!
「ほら、リーアに王都土産」
「え?私に?え?なんで?」
ウイルが右手を突き出している。
「せっかく王都まで来たんだから、食べ物以外も記念にあった方がいいだろう」
「ありがとう、ウイル!」
ぎゅっつウイルを抱きしめる。
あ、逃げないぞ?うわーい。ぎゅむむっ。
ついでに頭をなでこなでこ。
うーん、大きくなったので撫でにくいです。
そうだ!お土産何だろう?
ウイルの手から受け取る。
小さな赤い石のついた髪留めだった。
「わぁー、きれい!まるでリンゴの実のような赤ね!」
「ねーちゃんはどこまでも食べ物だな」
ウイルがあきれたように小さくため息をついた。
「ねぇ、似合う?」
早速前髪を少し取りサイドに流して髪留めを留める。
ウイルは少しまぶしそうに私の顔を見た後、小さな声を出した。
「なぁ」
「ん?」
「帰るんだよな」
「うん」
「そのさ……リーア」
「何?」
「俺と一緒にイチール領に戻るってことは、その、俺が婿でいいってこと?」
「え?」
突然の言葉に顔が真っ赤になる。
婿、ウイルが?
そういえば、私、婿探しに王都に行ったんだっけ……。
忘れてた!
「誰も婿が見つからなかったから、ウイルを婿にするとか……。そんなこと言ったら、母さんに怒られる!そ、そうだ!食材探しのついでに婿も見つけてくるから安心してって言えば……いや、巫女の勤めがあるからって……うわわぁ、どうしよう、どうしよう、ウイル?あれ?ウイル、何?なんか怒ってる?ウイルってばぁー!」
ありがとうございました。
ブクマ、感想、評価に励まされ完結させることができました。
「食いしん坊巫女と猫竜王」は完結しましたが「食いしん坊巫女と熊竜王」とか他にも機会があれば書きたい!です(*´▽`*)
そして皆様のおかげで本日ビーズログ文庫様より「くいしんぼう巫女と猫竜王」発売です(*'ω'*)
主な改稿点としては、ウイルがより男らしくなっております。あと、料理描写を強化しております。
リーアのよだれは健在です!(規制されてませんっ!)
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
あ、明日、番外編のおまけウイル視点を更新します。




