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【書籍化】爆裂よだれチート!食いしん坊巫女と猫竜王  作者: 富士とまと


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皆の進路

「えええーっ!あの、私の狙ってた肉を食べちゃったり、私の肉まんを食べちゃったりするタウロスさんが将軍?!」

「リーアの食べ物を盗った?処分が必要か」

 ふえ?

 処分?

 私の食べ物を盗ったとか、それニーラさんもだし。そんなこと程度で処分とかされてたら、私の周りに人がいなくなっちゃうよっ!

「ひっ、必要ないですっ!タウロスさんにはとてもお世話になってるので。食べ物も悪気があってのことじゃなくて、タウロスさんのこと嫌いじゃないです。恨んでもないですっ!」

「タウロスみたいなのが好きなのか?筋肉か……?」

 は?

 前にウイルにも似たようなこと聞かれたけど。

「私が好きなのは、筋肉じゃなくて、料理ですっ!見ただけでよだれが出るような人っ!」

 殿下がじーっと私の顔を見ている。

「ちっ。よだれ出てないな。ニーラはどうだ?」

 ニーラさん?

「一緒にいっぱいおいしいもの食べたなぁ……」

 あ、思い出したらよだれが。

「ちくしょーっ!リーアは僕のなのにっ!餌付けかっ!」

 餌付け?

「あ、そうでした。ナリナちゃんに注意されてたんだ。おいしいものあげるからってついて言っちゃダメだって。失礼しゃうよね?私は犬や猫じゃないのにっ!」

 あれ?殿下が微妙な目つきで見てる。

 はっ!猫竜様に対して失礼な言い方したかな?

 いや、でも、猫竜様はおいしいもの食べさせてあげるっていう巫女についていっちゃったりするよね?

「私は、おいしいものを作れる人しかおいしい人として認めませんっ!」

 おいしいものを見つけるのは私の仕事だもん。私の見つけたおいしい食材をよりおいしく調理してくれる人。そういう人が見ただけでよだれの出る人だよっ!


 1の円に戻ったら、そろそろ夕食の時間だった。

 食堂がざわざわとざわめいている。

 昼間のあの騒ぎがあったにも関わらず、そのまま各代表が作った料理がテーブルには並べられていた。カジタナさんの領は失格になったようで姿が見えない。

 失格になった領はこれで3つ目だ。その分料理が足りないので食堂で作られた料理も並んでいた。

 ゴマルク公爵様が、いつものように現れた。

「新しい巫女様が現れたことは、皆知っているだろう。それにより、料理コンテスト継続の必要がなくなった」

 ふおうっ!

 なんですとぉーっ!

 っていうことは、もうコンテスト終わり?コンテスト終わっちゃうと、終わっちゃうと……。

 ナリナちゃんの領とマイマインさんの領を見る。

 もう、食べられなくなっちゃう?

 って、違う違う、もう会えなくなるのが寂しいんだよっ!

「今後の予定を変更し、競い合うのではなく、各領地の味を広げるために料理してほしい。せっかく王都に集まったのである。領地の特産物や名物料理を広め、新しい料理を模索し、国全体として食文化を向上させてほしい」

 ぐおおおー!

 ゴマルク公爵様すばらしい!なんという素晴らしい提案!

 さすが、仲間なのーっ!ただの食いしん坊公爵じゃないのっ!

「ん?妃選びなど誰も言っておらぬぞ?料理コンテストと妃となんの関係があるのじゃ?」

 ゴマルク公爵様がこてんと首を傾げた。うーむ。まるで物忘れの激しい老人に見えるそのしぐさに誰も何も言えなかった。

 って言うか、視線が私にめっちゃ向いてるんですけど。

 巫女が現れたせいで妃選びが中止になったとか思われてます?私のせいじゃないよぉ!


 それからの約3週間は至福の時だった。

 各領の料理は立食形式で好きなもの食べ放題。

 あれほど悪い色をしていた領の料理も、競い合わないとなったとたんにきれいな色になった領もあった。

 すべてではないけれどね。

「嬢ちゃん、今日も頼むよ」

 タウロスさんに声をかけられ、1番目から5番目においしい料理をお皿に盛り付けてお盆に載せる。

「手伝うよ」

 マイマインさんがお盆を持ってくれた。

「私も、デザートを運んで差し上げますわ。今日のお兄様お手製のアップルオレンジムースは絶品ですわよ」

 ナリナちゃんがデザートを持ってきてくれた。

「ありがとう!二人とも!」

 両手を広げてぎゅっと二人一度に抱きしめる。あ、手が後ろに回らない……ってあれ?今日はナリナちゃんに逃げられない。

「あっという間だったな」

 マイマインさんの言葉にナリナちゃんが頷いた。

「そうですわね。今日で料理大会……ではなくて、料理交流会も終わりですのね」

 しんみりとした声がナリナちゃんの口から出る。

「もうお別れだと思うと、少しだけ寂しくまりますわね」

 はっ!いつもの調子に戻ったかと思うと、ナリナちゃんの体がするりと私の腕の中から抜け出した。

 にゅ!

「お別れ?」

「お兄様はお城で働くことになりましたけれど、私は領地に帰るつもりですの。マイマインさんも王室の料理人にスカウトされたんでしょう?王都には残りませんの?」

「私の役目は、特産品のきのこを広めることだったからね。料理交流会のおかげでずいぶんきのこレシピも増えたからね。まずは領地に戻ってレシピを広めようと思っているよ」

 そっかぁ。そうだった。

「私も領地に戻るんだった。そうだね、みんなばらばらだ」

 この3週間が幸せ過ぎて忘れてた。ナリナちゃんやマイマインさんとお別れなんだ。

「「領地に戻る?」」

 マイマインさんとナリナちゃんが同時に驚きの声をあげた。

 ちょっ!

 まさか、私、王都にはおいしいものがたくさんあるから領地に帰りたくない!残る!って言うと思われてた?


次話で食いしん坊巫女と猫竜王、完結です。

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