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【書籍化】爆裂よだれチート!食いしん坊巫女と猫竜王  作者: 富士とまと


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将軍って?

「店主、売ってくれ!金は払う、弁当が必要なら弁当代も別に出す、ほら、これで足りるか?もらうぞ、もう買ったからな!」

 殿下が無造作に取り出した金貨を店主に押し付け、弁当の入った木箱を取り上げ、中にあったじゃが芋ロールを掴んだ。

 ガブリ。

「これは、うまい!」

「で、で、で、殿下ぁ~ずるいです、私も、私が見つけたのに……」

 やばい、マジで泣ける。

「ほら、リーア泣くな、食え」

 殿下が半分ちぎって手渡してくれた。

「殿下大好きーっ!」

 むぎゅっ。

 あ、いけない。殿下だった。っていうか、そんなことより、じゃが芋ロール!

 ぱっくん。

「おいしぃ!挟まれた野菜はシャキシャキ新鮮で苦みも少なくて食べやすい。じゃがいもは甘みと旨みが強い素晴らしいものだわ。胡椒も香り高くて、いい品間違いないです。それからこのくるんであるのは小麦粉のいい香りと、あと何だろう?」

「そばです。そば粉と小麦粉を混ぜて焼いてます」

 そば粉?初めて聞く。世の中には私の知らないものがまだまだいっぱいだ。

「はぁー、やっぱり母の言う通りかもしれないなぁ……分かる人間は分かるんだ」

 突然店主が力を失ったように肩を落とした。

「母はいつも、嫁の目は確かだ。嫁の舌も確かだ。店を繁盛させたければ嫁に手伝ってもらえと……」

「じゃぁ、手伝ってもらえばいいじゃないか」

 殿下の言葉に店主は首を横に振った。

「妻には苦労をさせたくないんだ。露店販売は、暑い日も寒い日も外に立ち続けないといけないから」

「うーんと、奥さんはね、幸せだと感じてるしお兄さんのことすっごく大事に思ってると思うよ」

 ご主人のために作ったお弁当のキラキラがそれを物語っている。

「でも、もしかしたら家で一人で帰りを待つよりも一緒にお店に立ちたいって思ってるかもしれないし、いっぱいの人においしいって言ってもらいたいって思ってるかもしれないし、うーんと……」

 とはいっても、店を手伝ってくれとか言い出しにくいよね?

「そうだ!巫女様が奥さんの料理を食べにまた来るから、お店に出してほしいって言ってみて?」

「へ?巫女様?」

 タイミングよく、制服姿の騎士が私と殿下の後ろに立つ。

「殿下と巫女様です。このことはご内密に」

 小さな声で騎士が店主に告げた。

「は、はい。あの、その、いつも母がお世話になっております」

「母?お前の母などお世話してないぞ?誰のことを言っている」

 殿下の言葉に店主が頭を下げた。

「申し訳ありません。あの、1の円で食糧庫番を母はしております」

 え?

「カシェットさんの息子?」

「確かに、いろいろとお世話になっているな……」

 騎士がぼそりと何かを思い出したのかつぶやいた。あ、きっと若いころ訓練の合間に食糧盗もうとして追い返されたのね……。

「誰だ?」

 殿下がイラついた声を出した。自分だけ知らないのが気に入らないのだろう。

「あのね、とっても強いおばぁさん」

 私の言葉に騎士がこくこくと頷いている。

「それから、おいしい野菜が分かる人」

「それは本当か?巫女の力があるのか?」

「ううん。私とは違って、見た目や手触り、重さや叩いた音などいろいろな方法で美味しいものを見分けるプロよ。あ、プロと言えばニーラさんと見つけた八百屋さんもすごかった」

 私の言葉に、殿下が再びイラっとした声を出す。

「またニーラとか!何度リーアは僕のだと言えば……くそっ」

 ごめんごめん。仲間はずれにしたつもりはないんだよ。

 思わず殿下の頭をなでなで。

 うん。子供の髪の毛は柔らかくて気持ちいいです。でも、もう一度子猫姿になってくれないかなぁ。

 何か悪いものを食べさせれば……っと、いけない、いけない!つい、心の悪魔が……。別のこと考えないと!

「カシェットさんが認めた奥さんもすごいよね。これに使われてる食材、よいものばかり。あ、そうだ、カシェットさんが王室御用達の店以外からも仕入れられたらいいのにって言ってたけれど、仕入れ担当何人か頼んだらどうかな?お城じゃなくて兵たちが食べる物であれば王室御用達にこだわる必要もないんじゃない?」

 そうすれば、1の円の食堂の料理がもっとおいしくなるってことだよね。

 えへへ。

 おっと、よだれ。

「何を考えた?」

 ん?やだぁ。乙女の心をのぞこうなんて、殿下もてませんよ。

「食べ物に関係することだろう?」

 なぜ分かる!

「しかも、おいしいものだろう!」

 なぜ分かる!

「1の円の食堂の料理がもっとおいしくなるって思っただけです」

「兵たちの食事か?肉さえあれば満足する人間に出される量だけが自慢の料理だと貴族どもが言っていたぞ?」

「その貴族たちが普段どのようなものを食べているのか知りませんが、おいしいですよ。おじさんたちがおいしいものを腹いっぱい兵に食べさせたいと日々工夫を重ねて作っていますから」

 殿下は満足そうににんまり笑った。

「いいことを聞いた。王宮の調理人の入れ替えが終わるまでは、あっちで食うか。タウロスに用意させよう」

 はう?

「タウロスさんとお知り合いですか?」

「まー、嫌でも顔を合わせるぞ。将軍だからな」

「へー、将軍なんですか」

 ……?

 誰が?

 まさか、まさか……?


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