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【書籍化】爆裂よだれチート!食いしん坊巫女と猫竜王  作者: 富士とまと


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陛下って?

「す、すいません、巫女の力っていうのは、私が勝手にそう思い込んでいるだけで……。あの、その、ひーひーおばあちゃんが昔巫女だったから、その、私の不思議な力も巫女の力なんじゃないかって……言っていただけで……」

 ゴマルク公爵様がドドドドッと地響きがするくらいの勢いで私の元へと走ってきた。

「娘、今の話は本当か?高祖母が巫女だったというのは!」

 ふえええ。

 嘘じゃないけど、嘘じゃないけど……。

「は、はい。そう聞いております。両親も祖父母から聞いただけで、本当かどうか確かめたことはありません」

 そもそも、ニャンドラ王国の北端の小さな領にどうして巫女様が来たのかってところからよく考えると変な話だったりするよね。

「確かめなくたって分かるさ。リーアは確かに巫女だ」

 ニーラさんの手が伸びて、後ろからぎゅっと抱きしめられた。

 えっと、えーっと……。

「血を引いていようがいまいが関係ない。今、ここに、我が巫女がいることが大切だ」

 ニーラさんがゴマルク公爵様に向かってかなり生意気な口をきいているような気がするんだけど。

 確かゴマルク公爵様は宰相よね?

 公爵っていうだけでかなり立派な方なのに、そのうえ宰相っていうことは、相当立派な立場な人のわけで。

「娘に問う、巫女の力と言っていた能力とは何だ?」

 ゴマルク公爵様はニーラの発言などまったく聞こえないかのように私に問うた。

 皆の注目が集まっている。

 うううう。

 こ、ここで、言わなくちゃだめだろうか。

 もういっそのことさっさと牢屋に入れてください!

 巫女の血が……巫女の力が……おいしいものを見つける力だなんて……!

 怒られる、怒られちゃうよーっ!

 だけど、言わないわけにはいかない雰囲気だ。

 ううう、ううう。

 ゴマルク公爵様がじりじりと少しずつ近づいている。答えを聞くまで逃がさないと言わんばかりだ。

 ええーん。ウイル、ごめんよ。本当に、巫女の血がとか言ってた私がおろかだったよ。

「おいしいものが分かるんです」

 小さな声で言って、顔を伏せた。

 見れない。ゴマルク公爵様の顔も、周りの人たちの顔も。

「それだけではあるまい!」

 ゴマルク公爵様が興奮した様子で声をあげた。

「恐れながら、あの、それだけです。申し訳ありませんっ!巫女の血とか関係ないですよね。あの、でも、なんか声みたいなものを感じて、おいしいよとかにがいよとか……あと、その……まずそうな色とかなんかそういうのも分かるっていうか……」

 土下座したいっ。

 気持ちはめっちゃごめんなさーーーい!なんだけど!

 あいにくと後ろからニーラさんにホールドされてるのでそれもできない。

 ぺこぺこと何度も頭を下げるくらいしか。

「それだけじゃないぞ」

 え?

 少年がゴマルク公爵様の豊満な腹をとぷとぷと叩いた。

 少年!偉い人だよ、ゴマルク公爵様は!いくら貴族でも、それ、ダメだよっ!

「リーアの手料理を食べ物を食べると力が湧く。リーアがおいしくなれと声をかけた植物は力を持つ」

 ふえええ?

 少年は私をかばおうとしてるの?

 おいしいものを食べれば誰だって力は湧くし、おいしくなれという気持ちで接すれば、誰だって食べ物はきらきらしておいしくなるよ?

「なんと!なんと!なんと!なんと!」

「嘘じゃない。これ、リーアが育てたリンゴで作ってもらったアップルパイ」

 いつの間に持ってきていたのか、少年が出来立てホカホカのおいしそうなアップルパイを持っていた。

 うっわー、おいしそう。

 おいしいよ。あまいよ。おいしくなったよ。さいこうだよ。

 いっぱい声が。

 うひょうっ。よ、よ、よだれが!

「ひー、すいません、こんな状況でよだれとか……あの、拭いてもいいですか?」

 もう、私のバカたれー!

「ふ、ふふふふっ、ははははっ」

 ゴマルク公爵様が笑いだした。

「リーア」

 ニーラさんの腕の中から出てハンカチを取り出そうとしたんだけど、ニーラさんは手を離してくれなかった。

 いや、お願い、よだれたらしたまま、注目を浴びるなんて……。

 おおう、助けて!

 ぺろり。

 ぎゃーっ!

 さすがによだれ姿はいやだと思ったけれど……。

 ニーラさん、ちょっと、さすがに、よだれをなめとってくれるとか、それもどうなんでしょうかっ!

 突然ニーラさんの顔が私の顔の横に後ろから伸ばされたかとおもうと、あっという間にぺろりとされた。

「ちょっ、何ですの!そのイチャイチャな茶番は!」

 カジタナさんがお湯を沸騰させたような怒った表情を見せる。

「ゴマルク公爵様も呆れて笑い出しておいでですわ!巫女を語る敵国のスパイなど、すぐに捕らえて、いえ、ここで処分するべきです!」

「そ、そうだ!あの謎の男も一緒に捕まえろ!貴族のような服装をしているが見たことがない顔だ!」

 貴族の護衛もしている者だろうか。騎士から声が上がる。

「確かに、あそこまでの容姿をしていれば噂にもなっているだろうが、知らぬのだ。貴族ではない!」

 と、他の者からも声があがった。

 確かに、ここまで人並み外れた超絶美形がいたら、どこどこのだれだれだって、名が知れ渡っていても不思議じゃない。

 貴族じゃなかったの?立ち入り禁止だったのは、貴族じゃなかったから?豪商か何かなのかな?

「やれやれ、勉強不足の者たちにも困ったものじゃな」

 ゴマルク公爵様が、ため息をつくと少年の手からアップルパイを一切れ取り、ニーラさんの口に運んだ。

「真実を見せてやってください陛下」

 ん?

 陛下?

 陛下って?

 王様のこと?

 誰が?


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